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原爆症長崎判決  一層の基準緩和迫られた国

 原爆症の認定審査基準をめぐって、国がそれまでの基準を2008年に大幅緩和して設けた新基準でもなお、当然、救済されるべき被爆者が不合理に切り捨てられてしまう欠陥があることを指摘し、基準のさらなる緩和の必要性をあらためて浮き彫りにする判決が、20日、長崎地裁(須田啓之裁判長)で出された。

 国は、原爆症認定を求める被爆者の集団訴訟で連敗を続けた事態を受けて、08年4月から、がんや白血病など5疾病を「積極認定」の対象とするなど大幅に緩和した新基準に移行した。だが、その後も各地の裁判所で同5疾病以外の疾病でも原爆症と認定する判決が続き、今回、長崎地裁で新たに「変形性脊椎(せきつい)症」「脳腫瘍(しゅよう)」各1人を原爆症と認定する判決が出された。

 08年の新基準が、原爆症の実態に即したものではなく、旧基準の欠陥を極めて限定的に、言い換えれば、その場しのぎの形で若干、「改善」したにすぎないことが一連の判決で暴露されたわけである。国はこの事態を真摯(しんし)に受け止め、原爆症患者の全面救済に向けて基準の一層の緩和を急ぐべきである。

 20日の長崎地裁判決は、原爆症認定申請を却下された本県の被爆者14人(うち3人死亡)が国に却下処分の取り消しと賠償を求めた長崎第2陣訴訟に対するもの。原告のうち8人は既に新基準で認定されていることから、新基準でも未認定の6人に対する地裁の判断が注目された。

 須田裁判長は、6人のうち、変形脊椎症と脳腫瘍の2人を認定したが、他の4人は「ケロイドの放射線起因性が認められない」「被爆地点から見て放射線に起因するとは考えられない」などの理由で棄却した。

 国家賠償については全員の請求を認めなかった。

 認定がわずか2件にとどまった判決に対して、司法救済に最後の望みを託していた原告団から「不当判決」と怒りの声が上がり、弁護団は「被爆者救済の流れに逆行する」と批判した。

 ただ、地裁判決が、国の新基準にない疾病を新たに二つ、原爆症と認定した意義は大きい。既に、新基準で5疾病が「積極認定」とされた以降に、昨年、慢性肝炎や肝硬変が追加され、裁判では心筋梗塞(こうそく)なども認定されている。そこへ長崎地裁が新たに変形脊椎症、脳腫瘍を認定した。司法の場で審理が進むにつれて、後から後から、原爆症と認定される疾病が加えられてくるのは、5疾病に限定した新基準がいかに原爆症の実態とかけ離れていたかを物語る。

 個々の裁判所で判断に食い違いが出たとはいえ、それらを総合すれば、司法が国の基準のさらなる緩和を迫っていることは明白だ。

 司法判断を総合して被爆者援護対策の抜本的な是正を図るのは、結局は政治の責任だ。政府が司法判断を真摯に受け止め、早急な是正策を図るよう、被爆地長崎から強く求めていく必要があろう。(高橋信雄)


(2010年7月22日長崎新聞掲載)


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