
政府は、中国人向けの個人観光査証(ビザ)発給要件を1日から大幅に緩和した。富裕層に限定していた発給対象を中間層にまで広げたもので、対象は1600万所帯に拡大する。日本の観光にとって巨大市場が創出されたことになる。
この機会を生かして中国人客をさらに誘致し、経済活性化につなげたいとの期待が、全国各地で高まっている。中国と歴史的なつながりが深い本県でも当然、期待は高い。ただ、中国の人々の関心は今のところ、東京や京都、北海道などに向いているようで、長崎への関心は低いという。また同じ九州でも、福岡県が強力な誘致作戦を展開して効果を挙げており、本県は、現時点では、やや水をあけられた状態だ。
本県が中国人観光客を大幅に増やそうとするなら、まず国内の地域間競争に勝たなければならず、そのためには周到な戦略の下、官民一体で強力な誘致キャンペーンを展開する必要がある。歴史的なつながりや地の利、観光県として培ったノウハウなど本県の財産をフルに活用すれば、それは可能だ。そして長期の大規模誘致に成功すれば、本県経済は大いに活性化する。この機を逃さず、積極的な取り組みで、中国の人々を一人でも多く、本県にお誘いしたいものである。
本県の外国人宿泊客(延べ滞在数)は、2008年の約88万人から09年約53万人へと急減している。これはウォン安で韓国人客が51万人から26万人へと半減したことが響いている。そんな中で増加傾向にあるのが中国人客で、08年約2万人から09年約2万3千人へと、小幅ながら伸びている。中国人客が増えていく可能性はもともと高い。
本県にとってうれしいのは、中国人客を乗せて長崎港に入る大型クルーズ船が増えていること。さらに今年は、北京の旅行社が、上海と長崎、鹿児島両空港を結ぶ旅行商品を開発し、6月から1年間に計200回実施する企画をスタートさせているのも好材料だ。
中国人観光客誘致に向けた県内の取り組みも、各方面で熱を帯びてきた。
県は6月、庁内に「アジア・国際戦略本部」を設置。中国など東アジアとの本格交流促進事業の立案、実行に乗り出した。もちろん、中国人客誘致は真っ先に取り組むべき重要課題だ。
また本県経済界と長崎大関係者が協力し、医療と観光を組み合わせて観光客を呼び込む「メディカルツーリズム推進協議会」を5月に発足させた。政府の医療ビザ新設方針を視野に入れた画期的な取り組みだ。
長崎市の中心商店街では、これまでにもクルーズ船入港に合わせて、中国人客が楽しく便利に買い物できるような、さまざまな取り組みを重ねてきた。こうして蓄積したノウハウが、今後、大いに役立ちそうだ。
中国語通訳の養成、鮮魚など長崎ブランド産品のPR強化など課題は多いが、官民一体の努力で、ぜひとも中国人観光客大幅増を実現したい。(高橋信雄)
(2010年7月4日長崎新聞掲載)
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