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 カネミ油症  今国会で被害者救済法を

 戦後最大の食品公害事件で、人類初の経口摂取によるダイオキシン被害でもあるカネミ油症事件。1968年に本県中心に西日本一帯で無数の被害者を出し、今なお多くの人々が健康被害や子孫への影響などで苦しんでいるにもかかわらず、公的な被害者救済は、いまだに行われていない。

 政権交代後、初の通常国会が今月、始まった。民主党は過去にも救済法案を提出しているが、審議未了で廃案にされてきた。政権与党になった今国会は、あらためて全面的、恒久的救済法案を提出し、成立を図る構えだ。被害者団体も「もう、これ以上、待てない」と早期成立を求めている。

 だが、多数の法案が提出され、審議される国会で、カネミ油症被害者救済法案が優先的に審議され、成立にこぎつけられるかどうかは、不透明だ。審議未了、廃案という事態になれば、被害者救済はまた遠のき、苦しみはさらに続く。法案をぜひ今国会で成立させなければならない。そのためには被害が集中した本県から早期成立を求める声を上げ、全国的に世論を高めていく取り組みが不可欠だ。

 被害者団体が求めている救済法の骨子は(1)国が被害者全面救済を怠ってきた責任を認め、謝罪する(2)未認定被害者も含めた全被害者の実態調査を実施する(3)厳しすぎる現行認定基準を、被害者救済を促進するような基準に改める(4)被害者への医療費、健康管理手当支給−など。いずれも実行が急がれる課題だ。

 カネミ油症被害者は普段通りに、食用油「カネミライスオイル」を使った料理を食べていて、深刻な被害を受けた。製造工程で食用油にポリ塩化ビフェニール(PCB)が混入し、そのPCBが熱で猛毒ダイオキシンに変化していたためだ。理不尽この上ない食中毒事件である。症状は皮膚、内臓はじめ全身に及び、今なお治療法が解明されていない。事件発生直後、全国で約1万4千人が被害を届け出たが、国に被害者として認定されたのは、1900人余りにすぎない。

 多くの被害者は、差別や偏見を恐れて被害者であることを口外せず、沈黙を続けている。しかも近年、次世代に被害が伝わる可能性が指摘されるようになり一層、苦悩を深めている。

 にもかかわらず、加害企業は責任回避を続けており、被害者に正面から向き合おうともしない。被害拡大を防止するとともに、未認定患者も含めた被害者の全面救済を図る義務を負うはずの国も、その責任を果たしていない。事件発生から42年、このような不正義、無責任がまかり通ってきたのがカネミ油症事件だ。

 24日、長崎市で開かれた救済を求める集会では、これまで実名公表を避けてきた被害者らが次々と壇上に上がり、長年の苦悩を赤裸々に語り、「一刻も早く救済法成立を」と訴えた。また、民主も自民も含む地元選出国会議員から支援の決意が示された。この声を全国に広げ、法案成立の機運を高めたい。(高橋信雄)


(2010年1月27日長崎新聞掲載)


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