
長崎市を拠点とする山田水産所有の以西底引き網漁船、第2山田丸(113トン)=股張保船長(49)ら10人乗り組み=が12日、航行中の五島市沖で突然、行方不明となった。
付近で無人の救命いかだや、漁船油が浮いているのが見つかったことから、第7管区海上保安部は、同船が転覆、遭難した可能性が強いとみて捜索を続けている。一刻も早い行方不明者の発見、救助が望まれる。
本県では昨年4月、平戸市生月町、大栄水産所有の巻き網漁船、第11大栄丸(135トン)が沈没し、12人が死亡、行方不明になる事故があったばかり。水産県長崎を現場で支えている人々が危険にさらされる事故を繰り返してはならない。なぜ、このような重大事故が続くのか。その原因を徹底的に解明しなければならない。漁船の安全性を確保する研究にも、官民挙げて緊急に取り組む必要がある。
第2山田丸に乗り組んでいたのは、股張船長と、甲板長の大道義人さん(54)=長崎市、機関長の満尾幸人さん(60)=南島原市、甲板員の今宮孝さん(58)=長崎市の日本人4人と、中国人6人。以西底引き網漁船は2隻1組で操業しているが、12日午前4時ごろ、股張船長から、前方約400メートルを航行中の僚船、第1山田丸に「甲板に波がかぶった」との連絡が入った後、交信が途絶え、レーダーからも消えたという。
同社によると、現場海域は波の高さ約2メートルで、しけていたが、「一般的には航行に支障のある状態ではないと思う」との見方を示している。では、なぜ遭難したのか。原因解明や安全対策の再検証も急がれる。
主に東シナ海を漁場とする以西底引き網漁業は、戦後、長崎、福岡などを拠点に隆盛を誇り、地域経済に貢献してきた。1960年代までは年間30万トン以上の漁獲量があったが、資源減少、韓国、中国漁船との競合などが原因で、近年は5千トン程度に落ち込んでいた。許可隻数も85年には435隻あったが、経営難で撤退が相次ぎ、現在は実質的には山田水産などの10隻だけとなっている。過酷な労働だけに船員確保が難しくなっており、外国人の雇い入れで乗り切っているのが現状だ。
本県では、巻き網、以西底引き網を含めて、多くの犠牲者を出す漁船遭難事故が相次いでいる。▽93年、巻き網漁船第7蛭子丸が沈没、19人が不明▽同年、巻き網漁船第21金光丸が砂利運搬船と衝突、金光丸が沈没し、9人死亡▽97年、以西底引き網漁船第18長運丸とパナマ船籍の貨物船が衝突、長運丸の乗組員10人が不明▽昨年の第11大栄丸沈没で11人が死亡、1人が不明となった事故−など、大規模事故だけでも枚挙にいとまがない。事態は極めて深刻だ。
操業の安全性が確保されてこその水産県長崎である。漁船の構造や操業形態に問題はないのか、県と業界が一緒になって、徹底検証を進める必要がある。(高橋信雄)
(2010年1月13日長崎新聞掲載)
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