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 飛翔、長崎県  龍虎のごとく、発展の道を

 「虎に翼」ということわざがある。「もともと実力のある者に、さらに力がそなわることのたとえ」(成語林)である。この言葉を聞くたびに、わが長崎県の本来の姿は、翼を持つ虎ではないのか、という思いがしてならない。

 本県は、人も文化も自然も物産も、すべてが素晴らしい。本来なら、人々の暮らしは活気と希望に満ちていなければならない。その潜在力からすれば、本県は見事な虎である。しかも、知名度という翼を持つ。翼を持つ虎として、発展の道を歩み続けていて当然の存在だ。にもかかわらず、いまひとつ元気がないように感じられるのは、なぜか。

 とら年の今年こそ、その原因を考え、虎は虎としてよみがえるべきである。さらに、天からの贈り物である翼を身に着けて、翼持つ虎、すなわち新生長崎県として飛翔すべきである。

 新生の第一歩は、2月の県知事選で踏み出すことになる。金子原二郎知事が4選不出馬を表明しており、県政は新たな時代を迎える。既に6人が立候補表明をしており、混戦模様だ。県民の意識が多様化している時代に、さまざまな立場から県民の意見を代弁する候補者が出てくるのは、歓迎すべきことだろう。

 あとは、議論をいかに深めるかだ。経済浮揚、石木ダム、諫早湾開門調査問題、新幹線建設、厳しい県財政の改善、教育・福祉・地域医療の充実、離島振興など、本県は重要な課題を数多く抱えている。どれも本県の将来を大きく左右する課題である。一つ一つについて、しっかりとした議論を重ね、県民のコンセンサスを形成していかねばならない。立候補予定者には、まずは、議論を深めることに心を砕くよう求めたい。中身の充実した選挙戦を実現することが、県政の土台づくりに不可欠だ。

龍馬伝で観光振興

 経済浮揚は、県民ぐるみで取り組むべき課題でもある。一昨年来の世界不況で、本県経済は深刻な影響を受けた。いまだに景気回復の実感はない。県民の暮らしを少しでもよくしたい。そのためには経済活性化策に、行政も企業も引き続き熱心に取り組んでほしい。

 特に、観光復活は緊急課題だ。ハウステンボス再建は年明けすぐに、めどを付けなければならない。観光客を増やし、交流人口を増やすことが、本県経済の底上げに極めて重要である。

 今年は、その観光振興に千戴一遇のチャンスが訪れる。幕末の風雲児、坂本龍馬を主人公にしたNHKの大河ドラマ「龍馬伝」が放映されることだ。しかも、龍馬に扮(ふん)するのは本県出身の福山雅治さん。全国的な龍馬ブーム、長崎ブームが巻き起こると期待できそうだ。このチャンスを、ぜひとも生かしたい。

 問題は、ブームを一過性に終わらせず、リピーター増につなげることだ。県民挙げて、もてなしの心で観光客に接し、永遠の長崎ファンになってもらおう。

核廃絶世論さらに

 世界に核兵器廃絶を訴え続けている被爆県として、今年は、特に重大な使命がある。5月に開かれる核拡散防止条約(NPT)再検討会議を実りある会議とするために、世界の先頭に立って核廃絶世論を盛り上げる必要があるからだ。

 昨年はオバマ米大統領が「核兵器のない世界」を提唱、一気に核廃絶機運が高まった。だが、具体的な取り組みはこれからだ。その試金石となるのがNPT再検討会議で、核保有国の核廃絶努力、核不拡散、核物質流出防止などの課題で、具体的合意に達する必要がある。成果がなければ、せっかくの核廃絶機運がしぼんでしまう恐れがある。極めて重要な会議だ。

 長崎、広島両市は、「2020年までの核廃絶」の道筋を示した「ヒロシマ・ナガサキ議定書」の同会議での採択を求めている。被爆者団体も被爆体験を訴えながら、会議成功を目指す。政府も国際世論の盛り上げに全力を挙げてほしい。

 核廃絶には、被爆地の地道で粘り強い取り組みが不可欠。長崎市は今後、核問題の国際会議の長崎開催などを積極的に働き掛け、世界をリードすべきだ。

 高齢者や障害者が暮らしやすい社会、犯罪のない安全・安心の街づくりに、県全体で不断に取り組むべきは言うまでもない。



 坂本龍馬の土佐脱藩を知った同志は、日誌に「坂龍飛騰」と記した。龍馬には飛龍の勢いがあったのである。その勢いを感じさせる福山龍馬が、今年は本県のためにひと働きしてくれるというから、うれしい。

 中国では古来、虎も龍も神獣とされ、特に「龍虎の図」は、めでたさの象徴として盛んに描かれてきた。その言い伝えにちなめば、とら年に龍が応援に駆け付ける本県のこの1年は、「龍虎の図」さながらに、活力に満ちた年となるはず。翼持つ虎のごとく、飛龍のごとく、空高く飛翔したいものである。(高橋信雄)


(2010年1月1日長崎新聞掲載)


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