
来年一月、東彼波佐見町で新工場建設に着工し、同十二月には操業を開始する予定だった長崎キヤノン(若狭央幸社長)が十七日、世界的な経済停滞による需要減少を理由に着工を延期すると発表した。
長崎キヤノンは、デジタルカメラ世界最大手キヤノン(本社東京、内田恒二社長)が今年七月、波佐見町進出を決定したのに合わせて設立された子会社で、新工場では従業員千人以上を雇用し、コンパクトデジタルカメラとデジタル一眼レフカメラを年間計四百万台生産する計画だった。
製造業の比率が低いため経済が活気に乏しく、深刻な雇用不安、若者の県外流出に悩まされていた本県にとって、キヤノン長崎進出発表は久々の朗報で、県、波佐見町、県内経済界がこぞって歓迎していた。特に若者に雇用の場を提供するという点で地域の期待は大きく、早期の操業開始が待ち望まれていた。
それだけに、長崎キヤノンの着工延期発表は、地元の期待を大きく裏切るもので、県内各方面に失望と不安を広げた。ただ、若狭社長は「延期はするが、長崎に生産拠点を置く方針に変わりはない。経済情勢が好転すれば、早期に着工する」と話している。その言葉を信じて、地元としては一日も早い着工と操業開始が実現するよう願いたい。
また、着工延期が県内の雇用情勢に影響を与えたり、地元就職をあきらめた若者が県外に流出する動きを加速させたりすることのないよう、本県行政と経済界が協力して、雇用安定に努めてほしい。
キヤノンが長崎進出を決めた理由は、地元で若く優秀な人材が多数、確保できると見込んだからだ。それを考えれば、着工延期に動揺することなく、若者を県内に引き留め、充実した職業教育を施すという地道な努力を続けるべきだ。その上で、キヤノン着工、さらには新たな企業進出が実現する日に備えたい。
十七日、県庁で記者会見した若狭社長は着工延期の理由を「世界的な経済停滞でデジタルカメラの需要が落ち込み、生産計画見直しを迫られた」と説明した。
同時に同社長は「延期はするが、事業規模は変えない」と語り、既に採用を内定している高校生を含む県内三百六十四人については、予定通り来年四月までに入社させる方針を示し、地元を安堵(あんど)させた。
同社から説明を受けた金子原二郎知事、一瀬政太波佐見町長も驚いた表情ながら、「やむをえない判断と受け止めている。一日も早い着工を望みたい」として、将来に希望をつないだ。
県内では先週、佐世保市の船舶機械メーカー、辻産業が会社更生法適用を申請し、地域経済に大きな不安を与えたばかり。暗い材料ばかりが増えるが、世界経済悪化の影響で苦しんでいるのは全国どこも同じ。雇用安定や中小企業支援など、地域経済を下から支えるきめ細かな努力を地道に重ねながら、この難局を乗り切りたい。(高橋信雄)
(2008年12月18日掲載)
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