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文と絵 松本和子
ここは若葉(わかば)町のごみ置(お)き場(ば)。「私(わたし)は取(と)っ手(て)が外(はず)れたので捨(す)てられました」。やかんが言(い)いました。 「私は縁(ふち)がかけちゃいましてね」と、湯(ゆ)のみが話(はな)しました。 「ぼくは奥(おく)さんが台所(だいどころ)の床(ゆか)に落(お)として割(わ)っちゃった」と、口をとがらせながら皿(さら)が言いました。 「おれ、つまみの具合(ぐあい)が悪(わる)くて、焼(や)いている間(あいだ)にパンから煙(けむり)が出てきて使(つか)えないんだって」と、トースターも悲(かな)しそうに言いました。 「あれ、隣(となり)の粗大(そだい)ごみの所(ところ)に、新(しん)入りさんが来(き)たよ」 「だれかな」 ![]() 「あ、山田(やまだ)さんちの電子(でんし)レンジ君(くん)だ」 「えっ? あのレンジ君は山田さんちへ来てから一年もたってないんだぜ。よその家(いえ)のレンジだろ?」 「ううん、まちがいないよ。山田さんちのだよ」 みんなはわいわいがやがや、話していました。 「やあ、みなさんこんにちは。あっ、平井(ひらい)さんのところのやかんさん。おや、そっちの皿さんは森田(もりた)さんのところの? トースター君も森田さんの。いや、みなさん長(なが)い間(あいだ)おつかれさまでした。しかし、いいですな。あなた方(がた)はちゃんと寿命(じゅみょう)が来て捨てられるんですから。私なんかみじめなもんですよ。まだどこも悪いわけではないのに、つい先日(せんじつ)、最新式(さいしんしき)のレンジが発売(はつばい)になったというので、新(あたら)しい物好(ものず)きの山田さんのご主人(しゅじん)が早速(さっそく)そのレンジを買(か)っちゃったもんだから、私はお払(はら)い箱(ばこ)というわけさ。悲しいもんですよ」 「レンジ君かわいそう」 「きっと、山田さんはもったいないおばけの罰(ばち)があたるよ」 みんなは人間(にんげん)の身勝手(みがって)さをなげきあいました。 欲(ほ)しくてたまらなかった品(しな)でも、飽(あ)きがきたらさっさと捨ててしまう。人間は「もったいない」ということを、すっかり忘(わす)れてしまっている情(なさ)けない生(い)き物だと。 (東彼東彼杵町蔵本郷、46歳、公務員) |
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