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文と絵 松岡聡子
むかしむかしのお話。ある村にサカじいさんというじいさまがおったんじゃ。 サカじいさんはなあ、おきぬという孫娘と二人で、それはそれは仲よう幸せに暮らしておった。 だが残念なことに、じいさまはおきぬを病気でなくしてしまったんじゃ。おきぬはまだ十にも満たない子で、サカじいさんの悲しみはひとしおだった。 おきぬをなくして半年ぐらい過ぎたころじゃろうか。サカじいさんはある日、山のてっぺんの、大きなニレの木に登ると、それっきり降りてはこなんだ。ニレのてっぺんで、ただ空ばかりみつめてた。 村人が「おーい、サカじいさん。降りてこんかい。何しとるんじゃ」と声をかけても、サカじいさんはいっこうに降りてこなんだ。 ![]() 次の日もまた次の日も、サカじいさんは木に登ったまんま、降りてこなかったんじゃ。 いつしか村人たちもあきらめて、サカじいさんのことを気にもとめなくなった。ただ、ときどきニレの木のそばを通るたび、「おーい、サカじいさん元気かい?」と声を掛けると、じいさまはただ、にこにこと笑顔を返すのだった。 そうこうしているうち、一年が過ぎた。ある日のこと、サカじいさんがうとうとと眠っているとき、「じいさま、じいさま」とだれかがささやくのが聞こえた。目を覚ますと、一羽のツルが自分の寝ている枝の隣の枝にとまっていた。 「おきぬ! おきぬか?」 「そうよ、じいさま。迎えにきたよ」 「そうか、そうか。おきぬ、ようきてくれたのう」 それっきり木の上のサカじいさんを見たものはおらんかった。ただ村人たちは、サカじいさんがいなくなる前に、二羽のツルがニレの木の上を仲よさそうに飛び立つのを見たそうじゃ。村人たちはサカじいさんがツルになって、おきぬのもとに飛んでいったのじゃと語り合った。 遠い遠いむかしの話じゃ。 (諫早市白岩町、30歳、フリーター) |
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