龍馬はくんちを見たか
 (2010年6月2日付)
 幕末の長崎を舞台に活躍した坂本龍馬。その龍馬に、長崎くんちを見物する機会はあったのだろうか。誰もが抱くこの疑問に答えを示そうと、長崎史談会の原田博二会長(63)があらためて資料を調べてみた▲原田さんによると、龍馬は1864年に勝海舟と初めて長崎を訪れて以降、暗殺されるまでの3年9カ月の間に計180日ほど長崎に滞在したと推測される。そのうち、くんちの時期に長崎にいたのは暗殺2カ月前、67年秋の一度きりだった▲その一度の機会さえ、龍馬にくんち見物の余裕はなかったようだ。「龍馬は脱藩の身。おおっぴらにくんちを楽しむことなど、できなかったはず」と原田さんはみる▲それでも、くんちは龍馬に強烈な印象を残した。海援隊士が英国人水夫殺害の犯人とされたイカルス号事件の嫌疑が、くんち直前に晴れた。お下り翌日の旧暦9月10日、龍馬は長崎の料亭で祝杯を挙げている▲さらに、お上りのあった同11日、酒に酔って遊女をからかっていた英米の水夫に、土佐藩士2人が切りつける事件が起きた。岩崎弥太郎は「土佐に逃がせ」と主張したが、龍馬は2人を堂々と自首させた。くんちと龍馬、意外な形で強く結び付いていた▲1日の小屋入りで長崎くんちが幕開けした。NHK大河ドラマ「龍馬伝」放映中の今年、「龍馬はくんちを見たか」と思案しつつ見物すれば、祭りの興趣も格段に深まることだろう。(信)


|長崎新聞TOP|