正しくこわがる
 (2009年4月30日付)
 「災害は忘れたころにやって来る」という警句で有名な科学者、寺田寅彦に、もう一つ、人と災害の関(かか)わりについての鋭い言葉がある▲「ものをこわがらな過ぎたり、こわがり過ぎたりするのはやさしいが、正当にこわがることはなかなかむつかしい」(随筆「小爆発二件」)。1935年の浅間山噴火の際、ふもとで、人さまざまの対応を見聞しての感想だ。災害の恐ろしさを警告し、同時に、冷静に被害の予防策を考える必要性を説いた寺田らしい言葉である▲米国のA・W・クロスビーは、1918年のスペイン風邪の全体像を描いた著書「史上最悪のインフルエンザ」(みすず書房)の日本語版序文で、寺田のこの言葉を紹介し、「我々が今、肝に銘じるべき言葉である」と強調している▲クロスビーは、人類が新型インフルエンザの脅威にさらされている状況は、今もスペイン風邪流行当時と変わらないと指摘する。だが、大きく違う点もある。豊富な情報と、効果的な対応手段を持っていることだ▲21世紀の今なら、油断せず、冷静、的確に対応しさえすれば、被害は防止できる。我々(われわれ)が取るべき態度は、「正当にこわがる」べきという寺田の言葉に要約されているというわけだ▲メキシコ発の新型インフルエンザの感染が拡大を続けている。各国が協力し、世界的流行を絶対に防がねばならない。「正当にこわがる」姿勢さえ持ち続ければ、それは可能である。(信)


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