聞きたい 言いたい

◆カネミ油症被害者支援センター共同代表  石澤春美さん(64)

石澤春美さん
診断基準、抜本見直しを

 〈カネミ油症は、認定制度の診断基準の壁で未認定患者が放置され、新認定患者はカネミ倉庫と係争中。患者の救済策は極めて貧弱だ。油症問題はどう進むのか。五島市など各地の患者を支援し、今月八日に同市で講演した石澤さんに聞いた〉

 −診断基準について。

 カネミ油症は未知な化学物質被害。診断基準は事件発生直後、皮膚症状を中心に油症研究班により設定された。その後、油症の主因はダイオキシン類と解明されたが、血中濃度に追加された程度で未認定者の救済には至っていない。未解明なまま作られた基準が四十年後の今も権力を持ち、被害者を認定、未認定に振り分けている。

 −どのような診断基準にすべきか。

 病像に基準が合致していないから、約一万四千人が被害を届けても認定者は15%にも満たない。家庭内でも認定か否かに振り分け、精神的苦痛を生んでいる。今の基準は、修正でなく根本的に変えるべきだ。ダイオキシン類がどんな症状を全身に引き起こすのか、症例を詳しく分析、整理し、基準に反映させなければならない。世界の知見に学ぶ必要がある。

 −国は、被害者救済は原因企業の責任としている。

 急性毒性の患者の大半が死亡。自殺者も各地にいる。被害の恐ろしさに比して救済があまりに貧しい。ひどい人権侵害。国は、企業責任としながらカネミ倉庫、カネカに救済を履行させる指導もせず被害者を放置した。当時、油症の情報は被害者に届かず、油に何が混入したのか、なぜ塩素〓瘡(ざそう)が家族を覆ったのか知らずに油を使い続けた人も多い。国の不作為に対し、過ち、責任を認めさせたい。苦しむ国民を救うのが国ではないのか。坂口力元厚労相も「法的責任の有無を超え、国が解決しなければならない問題」と発言している。

 −救済運動の方向性は。

 診断基準の抜本的見直し。そして公的な医療費支給が必要。第一世代の症状悪化と次世代被害をしっかり訴え、恒久的に被害者を救済する社会運動を進めたい。被害者が油症を隠していては救済にはつながらない。苦しみと不安を証言し、訴え、国を動かさなければならない。(聞き手は五島支局・山田貴己)

いしざわ・はるみ
 青森県出身、埼玉県在住。子育てを通じ食の安全問題などに取り組み、油症被害の掘り起こしを推進。ベトナム枯葉剤被害児支援の会代表、環境とくらし・市民ネットワーク代表、ダイオキシン・練馬連絡会代表など兼務。共著「カネミ油症過去、現在、未来」−など。

【編注】〓は「ヤマイダレ」に「挫」の「ツクリ」


2009年3月12日長崎新聞掲載

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