償いの行方 カネミ油症事件発生から40年
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賠償金問題
 「死ぬのを待ってるのか」


「経営難」と分割も応じず

 昨年十二月、北九州市のカネミ倉庫本社。「謙譲の美徳を忘れざること」と記した「道場訓」、日の丸などを掲げた一室。直接交渉に来た五島市などの油症患者ら五十人が、同社弁護士や幹部と向き合った。加藤大明社長の姿はない。

 「毒油で家族まで殺されたんです。決まった和解金や賠償金を私たちはなぜ受け取れないのか」。患者らは必死に訴えた。

 「和解条項をよく読んでいただきたい。払わんでいいということになってるんですよ」。弁護士の強い声が、かぶさった。

 全国統一民事第四、第五陣の原告患者が、同社と一九八七年に結んだ和解内容は▽同社は原告らに五百万円と支払いまでの利子を払う▽同社への強制執行申し立てや倒産などを除き原告は強制手続きによる履行を求めない▽治療費を誠実に払う▽原告の協議の申し入れに応じる−など。


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顔を隠すなどしながら直接交渉に臨む油症患者たち=2007年12月、カネミ倉庫
 賠償金が確定した同第一、第二、第三陣原告などが同社と交わした念書も、強制執行などがあった場合を除き、強制手続きによる確定債権の履行を求めない内容。当時の原告側弁護士は「医療費支給を確実にするのが目的だった」と話す。

 同社は和解条項や念書を盾に「医療費だけは払うことで折り合った。それ以上を、と言われれば倒産する。そうなれば医療費も払えない」と主張。患者側は「賠償金を分割で払う努力はできないか。経営が苦しいなら決算書を見せろ」と求めたが、応じなかった。

 国は同社に政府米保管を委託しており、年間一億−二億円支出。与党プロジェクトチームが昨年まとめた救済策によると、この政府米は「患者への治療費に充てる趣旨」との見解だ。一方、同社が支払った治療費などは二〇〇四年度で約四千五百万円、〇五年度約五千三百万円、〇六年度約六千三十万円にとどまる。支払人数は年六百人前後で、生存認定患者約千三百人の半数にも満たない。

 「患者の高齢化は著しい。カネミは医療費支出を極力抑え、賠償金を未払いのまま患者全員が死ぬのを待っているようにみえる」。年配の男性患者が沈痛な面持ちでつぶやいた。

◎メモ/医療費

 カネミ倉庫は認定患者の医療費負担のため受療券を交付。使える医療機関は限られている。医療費を立て替え払いすれば、領収書を添付し同社に直接請求できるが時間を要し、同社が支払いを断る例も。救済制度として不備が多い。


2008年5月20日長崎新聞掲載


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