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参院本会議で仮払金の特例法が成立した一日、五島市役所で開かれた患者側の会見。奈留町の古木武次(77)は、油症発生から約四十年ぶりに国が提示した救済策を歓迎した後、こう述べた。「許し難い。応じないなら別の方法も考えざるを得ない」。油症の原因をつくりながら、一向に責任を果たそうとしないカネミ倉庫への怒りだった。 古木と妻は発症した一九六八年から約三十六年間、未認定だった。ダイオキシン類の血中濃度が追加された新診断基準で油症認定されたのは二〇〇四年から〇五年。しかし、認定まで自己負担してきた多額の医療費、通院費などの支払いを原因企業のカネミ倉庫は拒否している。古木らは、民事訴訟も視野に入れ、対応を考えている。 原因企業のカネミ倉庫は、経営難を理由にその責任を果たしていない。医療費支給を目的に同社が認定患者に発行する油症受療券は、限られた医療機関でしか使えず、適用範囲も狭いため、患者は自己負担するケースが数多い。国は治療費に充てる趣旨で、同社に政府米を寄託し年間一億数千万円を支出しているが、同社の医療費支払総額は近年、年間わずか四千万円台で推移している。訴訟で確定した原告患者に支払うべき損害賠償金も未払いのままだ。
国の救済策も実行面において課題がある。〇八年度、生存認定患者約千三百人を対象とする健康実態調査が始まるが、油症に対する差別や偏見を恐れ、患者の大半は油症を隠して暮らしており、夫や子どもにさえ打ち明けていない女性もいる。支援団体は、行政や研究者が、患者の事情をよく知る患者代表や支援者らと密接に連携するよう求めている。 患者たちは支援者の協力を得て救済の声を上げ、政治家が動き、仮払金問題は一定の解決をみた。救済策の拡充などを探る超党派の議員連盟も発足する。だが、カネミ油症五島市の会の宿輪敏子(45)は「今後の道のりも平たんではない」と話す。治療法の解明、放置されたままの未認定患者など課題は山積している。 「これまで、油症被害の実態は過小評価されてきた。私たち被害者は、社会に言葉を発することから始めたい」。宿輪らは本格救済への道筋を模索している。(敬称略) (この連載は五島支局・山田貴己、報道部・堂下康一が担当しました)
2007年6月12日長崎新聞掲載
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