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「もう少しハードルを低くすることはできないでしょうか」 二月八日午後、自民党本部。谷川弥一(自民)は油症被害者代理人の保田行雄を、与党プロジェクトチーム(PT)座長の河村建夫に引き合わせた。たっての願いがかない、保田は一つ一つ丁寧に説明した。 保田はこれまでのPTの論議から、仮払金の一括免除や遺族に相続しないとの案は、債権管理法を所管する財務省がのまないと判断していた。返還免除となる収入額を引き上げ、救済対象を広げる策が現実的だと伝えた。河村は真剣に聞いていた。保田は手応えを感じた。 現行の債権管理法で免除対象となるのは、地域、年齢、家族数で異なるが、税金や社会保険料を差し引いた年収が最高で約七百万円まで。これでは約五百人の返還義務者のうち、約四割が免除されない可能性が高い。 そこで自民は年齢と地域を取り払い、免除対象の基準を夫婦と子ども二人の四人家族で「一千万円」未満に引き上げ。現行法の運用に従い、三人家族で八百五十万円、二人で六百六十万円、一人で四百六十万円とスライドさせた。「もう一押し」。保田は思った。
一方、立法化を前提に、症状データを提供した患者に協力金を支払う公明の「坂口私案」。これを基に自民は、予算措置で患者一人当たり数十万円を一時金として支払う案を提示した。官僚の抵抗をかわすための策だった。 公明は、一時金の額には不満ながら、国が油症の治療研究の充実を約束したことなどで、受け入れを決めた。額は「二十万円」。着々と救済策がまとまっていった。 ◇ ◇ ◇ 五月二十四日、衆院農水委員会。救済法案の質問に立つ田端正広(公明)は、こう切り出した。「万感の思いで本日を迎えている」 田端は二〇〇二年一月、本県の五島や福岡県に足を運び、油症被害の実態に衝撃を受けた。以来、関係各省の大臣に被害者を引き合わせ、救済を訴えてきた。あれから五年。与野党の議員が一人残らず起立し、全会一致で法案を可決した。 傍聴席にはこの瞬間を待ち望んだ多くの被害者の姿があった。その目には涙が浮かんでいた。(敬称略)
2007年6月10日長崎新聞掲載
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