苦悩の仮払金
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政治解決
  相続免除で割れる自公


 「仮払金問題は緊急性があり政治解決が必要。関心は非常に高い。年度内に決着したい」

 カネミ油症事件の被害者救済策を検討する自民、公明両党のプロジェクトチーム(PT)が約一カ月半ぶりに開いた今月十九日の会合。新座長に就いた河村建夫自民党政調会長代理は、意気込みを語った。

 同事件の油症患者らが国賠訴訟でいったん勝訴し、計八百二十九人に支払われた約二十七億円が「仮払金」。その後、訴訟を取り下げたため国は返還を迫ったが、多くの患者らは既に医療費や生活費に使い切って返せず、自殺者も出た。昨年末現在、五百四人が約十七億円の債務を抱える。うち「資力がない」と認められた三百四十七人は履行延期。百四十二人は分割払い、十五人は相続調査中などの措置だ。

 昨年、小杉隆元文相(自民)を座長とする与党PTは、安倍政権誕生後の臨時国会中、焦点の仮払金返還に関し、現行の債権管理法をベースに資力のない債務者に限り返還を免除する法案骨子をまとめた。だが、分割払い者の多くが救済の網からこぼれる可能性があり、本人死亡時に債務が子や孫など親族に引き継がれる相続問題にも触れていなかった。

河村座長(右)と田端公明党内閣部会長
与党PTの会合後、仮払金の相続免除について見解を述べる河村座長(右)と田端公明党内閣部会長=衆院第1議員会館
 「油症でぼろぼろになった体で懸命に働き、一定の収入を得ながら分割払いしている人は救わないのか」「子や孫に借金を残すことが一番恐ろしい」−。患者側からは骨子への批判が相次ぎ、患者代表らはPTに再検討を申し入れた。これを受け、公明党はPTで返還義務の相続免除案を示したが自民党と調整が付かず、法案提出は見送られた。

 一方、民主党は▽油症事件当初に被害を届けた約一万四千人に一律三百万円の特別給付金を支給▽仮払金未返還の患者は給付金と返還債務の相殺などで解決を図る−とする法案を国会に提出している。

 年が明け、河村座長の下で再スタートした与党PT。仮払金問題は、自公で意見が割れる相続免除案が論点。十九日の会合後、河村座長は「相続した時点で、有資力者か無資力者か考えるべきだ」とし、相続自体の打ち切りには否定的な見解を示した。

 公明党の田端正広内閣部会長は「患者までで(返還を)止めないと一族にマイナスの相続がつながり、人道的に忍びない」とするPTメンバーの坂口力・元厚労相の発言を紹介。「本人死亡で支払い能力はなくなったのだから相続はしない」とする考え方を説明した。

 仮払金債務者の救済の幅は、今後の自公の合意内容に委ねられた。無資力の判断となる「年収などの上限設定」でも大きく変わる。PTは二十五日召集の通常国会中に救済法案を提出する構えだ。

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 一九六八年、長崎や福岡など西日本一帯で広がったカネミ油症。深刻な健康被害が続いているが油症認定者は約千九百人にとどまり、公的救済制度もない。仮払金返還が患者らのさらなる重荷となっている。この問題はなぜ、生み出されたのか。関係者の苦悩と救済の動きを追う。(五島支局・山田貴己)


2007年1月23日長崎新聞掲載


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