38%子どもに症状、次世代へ影響浮き彫り 油症実態調査分析
1968年に発生し、本県に被害者が集中する食品公害カネミ油症事件。厚生労働省が3月31日公表した油症認定患者の健康実態調査の結果からは、患者が抱えてきた多様な症状に加え、5人に2人が次世代への影響を懸念している実態や、認定と未認定に線引きする診断基準の不備などもうかがえた。発生以来初めてとなった国の大規模調査を分析した。
次世代への油症被害は国が認める状況には至っていない。しかし、回答者1131人のうち38%に当たる432人が、事件発生後に生まれた子どもに症状があると答えた。
子の症状は「湿疹(しっしん)ができやすい」162件、「疲れやすい」158件、「鼻血がよく出る」132件−など。汚染油を摂取した母親から色素が沈着した「黒い赤ちゃん」が生まれ、社会に衝撃を与えたが、調査でも「黒い皮膚で生まれた」が66件に上り、自由記載欄には「子どもがこれからどうなるのか心配」などと記されていた。
全体の15%に当たる173人は孫にも症状があると回答。「湿疹ができやすい」の60件が最も多く「ぜんそく」52件−などが続いた。
カネミ油症五島市の会の宿輪敏子事務局長(48)は油症の治療法や被害実態に加え、次世代への影響についても「国が総力を挙げて調べるべきだ」と指摘する。
ダイオキシン類の血中濃度値や皮膚症状を重視した現行診断基準の不備も透けて見えた。一緒に油を摂取した可能性が高い家族が全員認定されているケースは48%。五島市の認定患者の男性(49)は「1人が認定されたならば、ほかの家族も優先的に認定すべきだ」と見直しを求めている。
患者がこれまでにかかった病気は「骨・関節」「皮膚・つめ」が80%超。「脳・精神・神経」58%、「心臓」39%、「がん」10%−など。日常生活に影響があるとした808人のうち、379人が調査時から過去1カ月間に健康上の問題で床に伏したり普段の活動ができなかったと答えた。
結果は、厚労省の全国油症治療研究班がさらに解析を進める予定。班長の古江増隆九州大大学院教授は「初めて全体像が分かってきた。ただ、これらのデータに加え、医学的に解析しないと今の診断基準を変えるべきかどうかは判断できない。次世代への影響は母親のダイオキシン血中濃度なども調べ、解析したい」としている。
2010年4月5日長崎新聞掲載
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