再開する巨大事業
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 視界不良   有明海再生策に批判も


 十八日午前。諫早市小野島町のゲートから、重機を積んだ大型トレーラーが中央干拓地に入った。福岡高裁が国営諫早湾干拓事業の工事差し止めを取り消してから二日。巨大事業が再び動き始めた。

 「無駄な公共事業のシンボル」「有明海異変の元凶」―。厳しい批判にさらされる諫干事業だが、地元には早期完成への期待も強い。

 諫早市の山間部で酪農を営む早田仁司さん(38)は、国の委託を受け干拓農地で牧草の管理栽培を手掛ける。「大規模で作業効率は最高」と魅力を語る早田さん。経営規模の拡大を目指して牛舎も改築。事業完成後は、干拓農地で牧草作りを希望する。

 干拓農地への営農意向調査では、昨年十一月までに県内外の百三十一人・団体から、計画農地の三・六倍に上る約二千五百ヘクタールの利用希望があった。大規模な経営展開ができる干拓農地への関心の高さがうかがえる。

 だが、手放しで喜べるわけではなく、営農希望は多いが、その意向をみると農地の「買い取り」はわずか8%(面積シェア)にすぎない。県は希望が多いリースでの利用も検討するが、その場合、四百二十億円(見込み額)の事業負担に加え、新たに土地購入の負担が発生する可能性がある。

全長7キロの潮受け堤防
 潮受け堤防の閉め切りで生じた調整池の水質浄化も大きな課題だ。県は二〇〇六年度の事業完成に向け、水質の目標値を設定。行動計画をつくり目標達成に力を注ぐが、水質改善は進んでいない。

 さらに「有明海異変」の解明も残っている。島村宜伸農相は十七日の会見で「有明海再生に向けて実効性ある取り組みを進める」と強調。有明海再生対策予算として本年度、同省は三十四億円を計上。漁場環境変化の原因究明に力を入れる。

 だが「諫干をタブー視した有明海再生はあり得ない」と反発する漁業者は、中・長期開門調査を要求。国の有明海再生対策についても、市民団体からは「無駄な公共事業を突き進めた結果、さらに税金をつぎ込んでいる」との批判も出る。

 さまざまな問題を投げ掛け、迷走を繰り返してきた巨大公共事業。九カ月ぶりに工事は再開されたが、まだ視界は晴れていない。

(この企画は報道部・小出久、佐藤烈が担当しました)



【写真説明】全長7キロの潮受け堤防。諫早湾干拓事業は9カ月ぶりに再開された(右側が調整池)
2005年5月19日長崎新聞掲載


2005年諫早湾