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工事差し止め仮処分決定の衝撃が覚めやらぬ二十七日。農水省は早速、佐賀地裁に異議を申し立てることを決め、認められなかった場合、福岡高裁に抗告する方針も示した。“長期戦”も念頭に置いて争う姿勢だ。 司法の審理がどれほどの時間を要し、どんな判断がなされるか。予定の二〇〇六年度事業完成にどんな影響を及ぼすか、予断を許さない。有明海の漁業者らが、事業と漁業被害の因果関係の認定を求めている国の公害等調整委員会の動きもある。 委員会は十月にも結審し、年内にも原因裁定を出す見通し。原告弁護団の一人は「少なくとも原因裁定が出るまで、異議申し立ての結論を待つべきではないか」と裁判所に慎重な対応を促す。 二十八日、中央干拓地に工事関係者の人影が戻った。台風16号の接近に備えた資材搬出などの作業。工事再開のめどは立たず、硬い表情を浮かべゲートを出入りした。
九州農政局諫早湾干拓事務所によると、干拓工事の元請け業者は約二十社。「異議申し立てが認められ、工期が一、二カ月延びるだけなら業者との契約は継続するが、工事が一、二年止まるようだと契約解除せざるを得ない」という。 工事関係者二百―三百人にとって、工事中断の長期化は生活に直結する問題となりかねない。諫早公共職業安定所は漁業者らによる阻止行動で工事が中断した際、大量の離職者の発生に備えて干拓工事の雇用状況を調査したが、今回も情報収集などの検討を始めた。 「洪水は減り、塩害がなくなった。せっかくほっとしていたのに…」。諫早市川内町の土井賢一郎さん(37)は戸惑いの表情を浮かべる。稲作や養豚などを営み、県の営農意向調査にも答えた。 十数年前の就農以来、干拓地での増反に期待を寄せてきた。「広い優良農地で世界の農業と同じ舞台に立てる」。そんな夢の実現に暗雲が立ち込めつつある。「ここで止められたら防災面でも大変。工事を再開し、早期に完成してほしい」 工事差し止めはさまざまな波紋を広げている。迷走を繰り返し、地域をほんろうしてきた諫干事業。司法から重い課題が突き付けられ、前途に大きな壁が横たわった。(諫干取材班)
2004年8月29日長崎新聞掲載
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