工事中断
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問われる存在意義

 「東工区の見直しとなれば、恐らく調整池に潮を入れる。入れんと向こう(福岡など三県漁連)も収まらんだろう」

 農相の「諫干事業の抜本的見直し」表明を受けて二十九日夕、北高森山町内で開いた地元住民らの緊急集会。約百人が参加し、町独自で「諫早湾干拓事業推進協議会」を発足し、「見直し」に断固反対することを決めた。同協議会の幹部は見直しで想定される「シナリオ」に言及。東工区凍結と併せ、三県漁連が求める排水門開放による「干潟の再生」を示唆した。

 会場に漂う危機感。参加者から「すぐにでも役員が上京し国の真意をただすべき」などと性急な意見が相次いだ。

 地元では「防災の保障があれば見直しもやむなし」と一部でささやかれる中、見直しに対する森山町の反発の強さは際立つ。背景には同じ諫干事業の背後地でも諫早市とは異なる事情がある。

森山町独自で「諫干事業推進協議会」発足を決めた住民の緊急集会=29日夕、同町中央公民館
 同町の関係者は説明する。「見直しでも干陸化した西工区は農地として整備されるのでは。西工区は諫早市の地先。内部堤防に囲まれれば排水門が開放されても同市の旧海岸では潮の影響は比較的少ないだろう。だが、森山町の地先は西工区からほとんど外れ、常時開放によって旧海岸が潮に浸る可能性が出てくる」

 潟土のたい積と排水不良、農地や地下水の塩害など潮止め前に悩まされた“悪夢”が住民の脳裏をよぎる。

 「見直し」表明後も本体工事の中断が続く諫干事業の現地。北高高来町の北部排水門前に設置された下請け建設会社のプレハブ事務所では従業員数人が待機していた。

 いすに腰掛け、腕組みをして目を閉じていた従業員。物憂げに目を開いた。「やっぱり見直しか、という感じ。東工区がなくなれば仕事量は確実に減り賃金も下がる。といっても今の厳しい状況では、よその工事には簡単に入れない」

 従業員は北高小長井町の漁業者でもある。二枚貝タイラギの八年連続休漁でやむなく干拓工事に従事した。会社は多数の作業船を調整池に入れて東工区の水上工事を請け負う。二月下旬から有明海ノリ不作をめぐり干拓工事が中断。「国はこの事業をやる気がないのではないか」。従業員は半ばあきらめたように話した。

 見直しを表明した武部農相は談話の中で、諫早湾干拓事業を「自然と共生する環境創造型の農業農村整備事業」の先駆的な取り組みにしたいと打ち上げた。農水省は具体的な見直し案を年末までにまとめる予定だが、地元自治体をはじめ、事業の推進、見直しの住民、工事業者、漁業者らが抱える不信や不安、懸念は解消されるのか。構想から半世紀の歴史となる同事業は、二十一世紀に入って存在意義を問われる状況となっている。(この企画は報道部・徳永英彦、三浦祐二、諫早支局・大場泰造が担当しました)

2001年8月31日掲載

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