(2003年2月27日長崎新聞掲載)
本県観光の柱であるハウステンボス(HTB)が会社更生法の適用を申請した二十六日、経営を支えてきた取引業者や地場銀行、そして「観光立県」を目指して手を携えてきた他の観光地に大きな波紋が広がった。関係者は営業継続にひとまず安どしながらも、「一日も早く再建を」と今後の展開に期待を寄せた。
ツアーは従来通りに 観光関係者
県内の観光関係者はハウステンボスの破たんの影響に不安を抱きながらも、営業が継続されることでひとまず安どの表情を浮かべた。
国内外から大量集客するHTBは、今や県内の観光ルート形成に欠かせない施設。平戸市内の宿泊施設経営者は「県北観光を引っ張ってきてもらい、平戸も恩恵にあずかった。今回の事態はHTBだけの問題ではない」と危機感を強め、南高小浜町の雲仙旅館ホテル組合の宮崎高幸組合長は「県内全体の観光活性のために頑張って立て直してほしい」と述べた。
県観光連盟の野崎元治会長は「法的手続きの目的は再建のため。営業は続けるので大きな打撃にはならない。連盟としても今まで以上に応援していかねばならない」と支援を強化する考えを示した。
シンクタンクながさき地域政策研究所の脇田安大理事長は「今後、東アジアの所得が上がることを考えれば、HTBは有望な観光地。引受先は複数出てくるだろう。それまで質を落とさないことが大切」と指摘した。
一方、旅行代理店などはツアー商品の販売など従来通りの営業を続けるとの見解を示した。
JTB九州営業本部は「正直驚いた。しかし、ハウステンボスは営業を継続するとのことなので、現段階ではこちらも従来の商品を売り続けるとしか言えない。あとは顧客がどう判断するかだろう」と感想。
福岡の西鉄旅行営業推進部は「イメージダウンは否めないが、取りあえず営業継続と聞いて一安心している。今後の影響については今は何とも言えないが、再建計画の内容が一つの鍵になるのではないか。アトラクションなどの施設関係の投資が今後の計画で制限されれば、テーマパークとしての魅力は落ち込むだろう」と話した。
JR九州は「当面は従来通りハウステンボス向け商品の発売などによる集客を継続したい」とのコメントを発表した。
知事、営業支援を表明 県議会
ハウステンボスの会社更生法の適用申請は、二十六日始まった県議会一般質問でも取り上げられた。金子知事は、施設が営業を続けることを重ねて強調し、県が可能な限り支援していく考えを明らかにした。
知事は、「事業継続を前提に速やかな再生を図るため、経営陣が苦渋の選択をしたと受け止める。主力銀行も最大限の支援を継続するとうかがっている」と説明。「すべてのホテル、アミューズメント施設、イベントなどは従来通り運営される。全国に営業継続を情報発信し、観光客誘致対策を取る」として、風評被害の防止、雇用確保、取引業者対策などに取り組む方針を示した。
知事は、HTBから電話連絡が入ったのが同日未明だったことを明らかにし、「更生手続きは大変難しい。事前に連絡がなかったのはやむを得ないと思う」と述べた。
オランダ村買収に影響 西彼町
ハウステンボスの前身、長崎オランダ村が一昨年秋に閉園し、同社と跡地購入の交渉を続けている西彼西彼町は二十六日、オランダ村跡地買収について「事態が急に変化したため、本年度内の買収は難しい」との見通しを明らかにした。
町にはハウステンボスから固定資産税が年間六千万円納められているが、本年度分の固定資産税のうち二千八百万円分については、五月末までの延納願が出されているという。
村山一正町長は「ハウステンボスの会社更生法の適用申請は、ハウステンボス再生への手段の選択として前向きにとらえている」とコメント。町は緊急の幹部会議を開き「町としてできる限り再建に協力する」との方針を確認した。
西彼町商工会は「ハウステンボスには町内の真珠業者が出店し、園内の花を植栽する業者が入っている。オランダ村からハウステンボスに移った社員もおり影響が心配。今後の状況によっては救済窓口の設置を検討したい」と表情を曇らせた。
取引業者の支援対策も 佐世保経済界
開業以来、佐世保経済のけん引役として、地元をリードしてきたハウステンボスの破たんに地元の経済界などから影響を懸念する声が上がる一方、再建に向け支援、協力する声も相次いだ。
辻洋三・佐世保商工会議所会頭は「雇用を守り、企業存続のため、会社更生法による再建の道を選択されたことはやむを得ない」と理解を示し、再建へ協力するコメントを発表。会議所内に取引業者を支援する特別相談室を設置した。
森信正・佐世保観光協会会長も「(HTBは)佐世保市にとどまらず本県、九州の観光浮揚に大きく貢献した企業。できるだけ早い再建策を切望する」と述べた。
HTB近くに二〇〇〇年四月に開学した長崎国際大は卒業後の就職あっせんが売り物の一つ。運営する九州文化学園の本岡吉彦常務理事は「開学当初、六十―七十人の採用が望めると思ったが、現実的に厳しい。破たんによるイメージダウンが学生募集にどう影響するか心配」と話した。
「寝耳に水」驚き隠せず 地場銀行
ハウステンボスの経営を下支えしてきた地場銀行(十八、親和、九州、長崎)にとっても、二十六日の会社更生法適用の申請は「寝耳に水」。各行は衝撃を受けながらも、再建支援への姿勢をあらためて打ち出した。
「集客シーズンを控えており、何らかの動きがあるとすればもう少し先かと思っていたが」。ある銀行幹部は驚きを隠さなかった。
地場四行はHTBに計二百億円を超える額を融資。経営が厳しくなってからは返済金利の減免など融資条件を緩和して支援してきた。二十六日に申請することは各行に事前に相談はなかったという。
九州親和ホールディングスは「会社更生法申請は非常に残念。今後、法に基づき示される再建策に可能な限り協力していきたい」とコメント。十八銀行は「地域経済への影響も大きく、速やかな再建を期待する。できる限りの協力をしていく」としている。
各行は二十六日、本店などにHTBの取引業者向けの相談窓口を設置。また、同日は商工中金、中小企業金融公庫、国民生活金融公庫もそれぞれ長崎、佐世保各支店に相談窓口を、九州経済産業局も特別相談窓口を開設した。
あまりに早く突然… 取引先
ハウステンボスへの納入業者のうち、開業当時から取引を続けている県内の広告関連会社は「こういう事態をある程度予想していたが、あまりにも早く突然だった」と戸惑いの表情。「最近はHTB側の経費節減策から他社との受注競争が激しくなり納入割合は以前より低下していたが、県内企業としてできる限り協力したい」
HTB内のホテルのシーツやタオルなどの洗濯を請け負っている東彼郡内の業者は「これまで通り営業を続けると聞いているので、これからも取引を続けたい」。
HTBの関連会社に木材を納入している佐世保市内の資材販売会社の幹部は「問い合わせたら、これまで通り支払いをしてくれるということだった」とひとまずホッとした様子だった。
ハウステンボスは取引業者などへの説明会を三月三日午後一時から、佐世保市三浦町のアルカスSASEBOで開く。連絡を受けた業者は「来るべき日が来たと感じた。HTBの債務の支払いが遅れるようなことになれば、さまざまな業者に影響が出る」と不安そうに話した。

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26日も平常通り営業し、観光客らでにぎわったハウステンボス=佐世保市
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経営破たんしたハウステンボス(HTB)は二十六日も平常通り営業。開催中の年間最大のイベント「チューリップ祭」や、県民無料招待を実施していることなどから、前年より約140%多い約九千人の来場者でにぎわった。
HTBにはこの日、利用者からの問い合わせや従業員への激励の電話など約五百五十件が寄せられ、ホームページにも約二万件のアクセスがあり、社員らが対応に追われた。
ある社員は「わざわざ電話で激励していただくなどお客さまの心遣いに感激した。一日も早く再建し、こうした声に応えたい」と話した。(佐世保)
東京・京橋にあるHTB東京支社は二十六日、予約済みツアーなどについて旅行代理店からの問い合わせに追われた。
東京支社は旅行代理店との交渉が主な業務。平常通り出社した社員らは、更生法申請に伴って本社から派遣されたマネジャーを中心に、取引先からの問い合わせに対応した。
マネジャーは「業務は平常通り。代理店には『元気に営業しています』と答えている。予約済みのお客さまに対して、これまでと寸分変わりなくサービスさせていただく」などと話した。(東京支社)
シーガイアに次ぐ大型倒産 九州・沖縄
会社更生法の適用を申請したハウステンボスの負債総額は約二千二百八十九億円。九州・沖縄地区では過去二番目の大型倒産となった。
民間信用調査会社の帝国データバンク長崎支店によると、負債総額は九州・沖縄地区では、大型リゾート施設「シーガイア」を運営する宮崎市のフェニックスリゾート(二〇〇一年・会社更生法)の二千七百六十二億円に次ぐ規模。バブル期に計画され、リゾート法に乗り第三セクターで建設された点で、ハウステンボスも同じ構図だ。
一九九九年以降、九州・沖縄地区で破たんしたテーマパークはハウステンボスを含め八社。この中には西彼伊王島町の伊王島スポーツリゾート開発(〇一年・特別清算)、西彼西彼町の長崎オランダ村(〇二年・特別清算)が含まれている。いずれも地域振興に貢献をしたが、バブル期の甘い計画見通しが響き、経営が悪化した。
取り立て不能、遅延債権 取引各行が発表
みずほフィナンシャルグループや県内地銀などは二十六日、会社更生法の適用を申請したハウステンボスについて、取り立て不能か、取り立て遅延の恐れがある債権額を発表した。
主取引先のみずほコーポレート銀行は一千二十三億二千七百万円。県内地銀では▽親和銀九十三億九千二百万円▽十八銀九十三億円▽九州銀三十二億八千百万円▽長崎銀十九億五千三百万円。
十八銀は貸倒引当金の積み増しと有価証券の減損処理をするため、二〇〇三年三月期の業績予想を経常利益四十億円から、二十億円の経常損失に下方修正した。みずほ、親和、九州、長崎各行は当期業績の予想に影響はないとしている。
三菱東京フィナンシャル・グループは二十六日、会社更生法適用を申請したハウステンボス向け債権百二十七億円に取り立て不能、遅延の恐れが生じたと発表した。
銀行別の内訳は三菱信託銀行が百八億円、東京三菱銀行が十九億円。公表済みの業績予想に変更はない。
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