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長崎新聞120年の歩み
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14・戦後混乱期と新聞
<14>
戦後混乱期と新聞
GHQが報道規制
統合前の県内4社に分離
■占領統治下の政策
1945(昭和20)年8月15日の終戦を境に、その後の連合軍による占領統治下で日本の新聞界は次々と変革の波に直面する。9月10日にはGHQ(連合軍総司令部)から「言論および新聞の自由に関する覚書」が出された。これは、原則として言論の自由を認めながらも、連合軍の占領政策を円滑に進めるために新聞、ラジオの報道を取り締まる基本方針を示したものだった。
続いて9月19日には「プレス・コード(新聞遵則)」、同22日には「ラジオ・コード(ラジオ遵則)」が相次いで示された。プレスコードでは、連合国に関し「虚偽または破壊的批判をしてはならない」とし、占領軍についても「不信もしくは怨恨を招来するような事項を掲載してはならない」と制限を加えた。
特に原爆に対する報道や出版は厳しく規制され、原爆詩人の栗原貞子の「生ましめんかな」、峠三吉の「にんげんをかえせ」などは発禁処分になった。また、占領軍兵士の犯罪自体についての報道も制限された。
9月24日には「政府から新聞を分離する件」、10月26日に「用紙配給統制撤廃の件」などの覚書や指令が矢継ぎ早に出された。その一方で、戦前、戦中に国民生活を縛っていた国家総動員法などの諸法令は廃止された。
■検閲制度スタート
「言論および新聞の自由に関する覚書」以降、GHQの新聞統制は厳しさを増し、9月14日に同盟通信社がニュース配信停止の処分を受けた。表向きは、米軍兵士の日本人女性暴行事件を配信したことが「公安を害するようなニュース」とされたのが理由だが、冷遇されていた150人に及ぶ在日外国人記者団の反感やねたみが直接の原因であったとも言われる。
同盟通信社は翌15日正午から検閲の下で国内配信だけ許されたが、この処分を契機にGHQによる検閲制度がスタートする。当初は同盟通信社と日本タイムスを対象としたが、次第に全国紙、地方紙へと拡大していく。同盟通信社は「政府から新聞を分離する件」の指令が出たのを機に自発的に解散。新聞通信部門は社団法人組織の「共同通信社」、経済通信と出版部門は株式会社組織の「時事通信社」に引き継がれた。
また、GHQの意向もあり、共同通信社を中心に協会創立の動きが起き、46年7月、全国の日刊紙62社の代表が集まり「日本新聞協会」が発足、「倫理綱領」が定められた。
■民主化で争議多発
終戦とともに起きた“民主化”の風潮は新聞界も例外でなく、「戦争責任の明確化」要望となって現れた。終戦直後の45年9月には読売新聞社で論説委員らによる「社内民主化、一部重役更迭」要求に始まる第1次争議が起こった。11月には朝日新聞社、12月には西日本新聞社など、全国の新聞社で争議が多発した。
戦時中に長崎日日新聞(長日)、長崎民友新聞(民友)、佐世保軍港新聞、島原新聞の県内有力4紙が強制統合させられ、発足した長崎新聞社も、長日が読売新聞と関係が深かったこともあり、幹部には読売からの出向や出身者が多かった。このため、読売の民主化運動の影響を受け、同年12月には長崎新聞従業員組合(中尾幸治委員長、183人)を結成。12月12日付で「飽迄縣民の公器 不偏不黨(飽くまで県民の公器 不偏不党)」の見出しで、次のような「宣言」をしている。
「4社分離」を知らせる共同社告=1946年12月1日付
−敗戦といふ(う)深刻極まりない現實(実)に、今や我らは祖國(国)は狂亂(乱)怒濤、正に飢餓線上にのた打つ。誰かこの責を負ふべき。我らは憲兵政治、特高警察のもと、幾多の掣肘(せいちゅう)ありたりとはいへ(え)、戦時中眞實(真実)の報道、厳正なる批判を加へ得ざりし責任を痛感し、これを冷厳なる自己反省の過程において讀(読)者諸彦(しょげん)に深謝するものである。(中略)全社の機能を擧(挙)げて長崎縣民の公器たらしめ、不偏不黨、飽くまで堂々の論陣を張って、公正且つ自由なる民主主義、新日本建設に應(応)分の力を致さらんことを誓ふ(う)ものである。
(要約)敗戦という深刻な現実に、祖国は混乱し、飢餓に苦しんでいる。誰かがこの責任を負うべきだ。私たち新聞も憲兵や特高警察の妨害があったとは言え、戦時中は真実の報道、(政府や軍部への)厳正な批判をしなかったことに責任を痛感し、これを厳しく反省し読者の皆さんに深く謝罪するものである。(中略)(これからは)全社挙げて県民の公器として不偏不党、あくまで堂々と論陣を張り、公正かつ自由な民主主義、新日本建設に力を尽くすことを誓う。
■経営をめぐり対立
こうして労使一体となって再建の道を歩み始めたように見えた長崎新聞社だったが、実態は読売系、旧長日系、旧民友系の間で経営をめぐっての対立が表面化。46年5月には2週間にわたってストライキが相次ぐ争議となった。
この事態を重視したGHQは係官に調査させた上、長崎地方検事局を通じて調停命令を出し、関係者と協議を重ねた。その結果、統合前の「4社分離」を前提とした共同声明を発表するに至った。
共同声明には、46年12月末日までに4社が円満分離することや、争議の責任を取って西岡竹次郎会長、渡貫良治社長は辞任することなどが記された。こうして長崎新聞社は同年12月9日、4年8カ月ぶりに統合前の4社に分離することになった。
これに先立つ12月1日付には4社連名で次のような「共同社告」が掲載されている。
−昭和十七年四月一日當(当)時の國策に基き縣下の四紙が統合して一縣一紙となった株式會社長崎新聞社(當時長崎日報社)は爾來(来)五ケ年近く讀者各位の御支援後眷顧(けんこ=ひいきにしてもらうこと)をいたゞいて參(参)りましたが、終戰(戦)後の新事態に即應して、このたび合併前の四社(中略)に分離獨(独)立し、來る十二月十日付紙面から長崎日日新聞社は「長崎日日」、佐世保時事新聞社は「佐世保時事」、新島原新聞社は「新島原」、長崎民友新聞社は「長崎民友」をそれぞれ創刊することになりました。
■復興へ再出発誓う
また、分離当日の12月9日付紙面にも連名で長崎新聞としての「終刊の辭(辞)」を掲載。戦時中の報道を振り返り、戦後日本の復興、再建と、新時代に向けて新聞の果たすべき使命と決意を次のように述べている。
−東條軍閥政權(権)の暴斷(断)によって強行された大東亞(亜)戦争は、われわれ國民に、有形無形あらゆる犠牲をおしつけ、しかも無条件降伏とゆ(い)う、わが歴史のうえに前例もない、みじめな大敗北の終結は、暴戰の招いた當然の帰結とはいえ、今日および明日に打ちつゞく受難として、われわれの食生活さえ、しみじみと痛感しているところであります。
(中略)しかしながら新憲法は既に制定せられ、各般の制度も、自由主義、民主主義を基本原理として着々整備の途上にあり、平和を愛好する文化國家建設の目標は嚴(厳)として定められたのであります。新聞界についても軍閥政權下あらゆる言論報道機關からその本來の使命を奪い去ったところの極端な言論彈壓(弾圧)統制も、今やいまわしき思出となり、文字通り言論の自由は、日本再建のいしずえとして、大いに民論の勃興を促しているのであります。私ども新聞人はこの點(点)からも使命の重且つ大なることを痛感いたす次第であります。
分離直前の「長崎新聞」の題字
長崎新聞社が従業員組合と連名で、不偏不党をうたった「宣言」社告=1945年12月12日付
4社分離当日に連名で掲載した長崎新聞「終刊の辞」=1946年12月9日付
2009年7月11日長崎新聞掲載
<20完> 未来へ(2009年12月29日)
<19> 「平成」の幕開け(2009年12月12日)
<18> 昭和から平成へ(2009年11月14日)
<17> 出島から茂里町へ(2009年10月10日)
<16> 一県一紙へ(2009年9月12日)
<15> 4紙分離と朝鮮戦争(2009年8月8日)
<14> 戦後混乱期と新聞(2009年7月11日)
<13> 終戦前後の新聞(2009年6月13日)
<12> 戦時下の新聞(2009年5月9日)
<11> 世界大恐慌とテロ(2009年4月11日)
<10> 昭和初頭の長崎日日新聞<下>(2009年3月14日)
<9> 昭和初頭の長崎日日新聞<上>(2009年2月14日)
<8> 大正時代と新聞<下>(2009年1月10日)
<7> 大正時代と新聞<上>(2008年12月13日)
<6> 「明治」から「大正」へ(2008年11月8日)
<5> 「長崎新報」不敬事件(2008年10月11日)
<4> 日清・日露戦争と新聞(2008年9月13日)
<3> 自由民権運動と新聞(2008年8月9日)
<2> 西南戦争と新聞(2008年7月12日)
<1> 揺籃期(2008年6月14日)
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