敗訴の県が控訴 在外被爆者手帳申請訴訟
被爆者健康手帳交付申請の「来日要件」をめぐる訴訟で、寝たきりのため来日できない韓国人女性、鄭南壽(チョン・ナムスウ)さん(88)への手帳交付を命じた長崎地裁判決を不服とし、県は十八日、控訴した。本県の支援者らは「(控訴を求める)国の言いなりで県の主体性が見えない。手帳交付がさらに遅れる」と猛反発している。
県庁で会見した入江季記福祉保健部長は、来日しないことを理由に申請を却下した県の処分は間違いではなかったとした上で、「鄭さんの年齢や健康状態を考慮した人道的判断ができないかと(控訴断念の考えを)厚生労働省に申し上げたが、控訴すべきとの強い要請があった」と説明。「(手帳交付は)法定受託事務であり、国の意向は尊重せざるを得ない」とし、「苦渋の決断」を強調した。
県によると、入江部長ら実務担当者が十二日に、金子知事が十七日にそれぞれ上京し、対応を協議。厚労省から「(同種訴訟の一審で敗訴した)広島県は控訴している。長崎県が控訴しなければ統一性を欠き、都道府県間で混乱が生じる」などと要請され、「最終的に国と同じ立場に立つべきと判断した」という。
これに対し、支援者らが長崎市役所で抗議の会見。在外被爆者支援連絡会の平野伸人共同代表(61)は、県の却下処分を違法とした十日の長崎地裁判決が「県知事は手帳交付の義務があった」との司法判断を示したことに触れ、「(国に伺いを立てる)県には主体性がない」と切り捨てた。
「来日要件」は六月に議員立法で成立した改正被爆者援護法で年内の撤廃が決まり、海外からも申請できるようになるが、改正法に沿った再申請はせずに控訴審で争う構え。手帳取得が遅れてしまうことになるが、支援者らは「再申請すれば、法改正まで勝ち取ったこれまでの闘いを無駄にしてしまう。県は改正法施行と同時に控訴を取り下げるか、県の予算で(手帳取得後に受け取れる)健康管理手当(月額三万三千八百円)分のお金を先に支給すべき」と訴えた。当面は支援者でカンパを募り、手当分を鄭さんに渡すという。
2008年11月19日長崎新聞掲載
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