手帳申請「却下は違法」 在韓被爆者・鄭さん訴訟長崎地裁判決
来日しないことを理由に、被爆者健康手帳の交付申請を県が却下したのは違法として、韓国人女性、鄭南壽(チョン・ナムスウ)さん(88)が国と県を相手に処分取り消しなどを求めた訴訟の判決で、長崎地裁(須田啓之裁判長)は十日、「却下は違法」として県に処分を取り消し、手帳を交付するよう命じた。健康管理手当の認定申請却下処分についても、時効分を除いて取り消した。
一方、国については「被爆者健康手帳を交付する権限を有しているとは認められない」などとして原告の訴えを却下した。
手帳交付申請に本人の来日を求めた「来日要件」について、判決は「被爆事実の確認や本人確認のために、直接本人から事情を確認することは重要で、合理的な理由がある」としながらも、「来日することが著しく困難な場合に、これに代替する方法は十分にありうる」とし、来日しないことのみを理由とした却下処分は違法と結論付けた。さらに「申請を受けた都道府県知事は、被爆要件に該当すると判断することができた場合には被爆者健康手帳を交付すべき義務を負担している」と踏み込んだ。
一方、国への訴えは却下したが、被爆者援護法は国の責任で被爆者の救済を図る一面を有し、「実質的に国家補償的配慮が制度の根底にある」と指摘、国の姿勢をただした。
判決などによると、鄭さんは二十五歳の時、爆心地から二・四キロの広島市で被爆。寝たきり状態となり、渡日できないため、二〇〇六年八月、手帳取得の申請書を郵送で県に提出した。
来日要件の是非を争った同種訴訟は全国でほかに三件が係争中。今年七月の広島地裁判決や、別の原告が訴えた九月の広島高裁判決も却下処分を「違法」との判断を示している。
来日要件は、今年六月に成立した改正被爆者援護法で撤廃が決まり、年内には海外からも申請できるようになる。
◎ようやく正常状態/龍田紘一朗・原告代理人の話
在外被爆者の場合、日本に来ないと手帳が交付されないと解釈されてきたが、それが明確に否定された。ようやく正常な状態になった。
◎国への請求は勝訴/岡部修・厚生労働省健康局総務課長の話
判決の具体的内容を十分把握していないが国を相手とする請求については国勝訴とされた。一方、長崎県を相手とする請求については県の主張が認められなかった。今後の対応については県、関係省庁と協議し検討したい。
◎国と対応協議する/金子知事の話
判決の内容を精査していないが県の主張が認められず、厳しい判決となった。今後の対応については国と協議し決定したい。
2008年11月11日長崎新聞掲載
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