NEWSあんぐる・李裁判 国の上告に波紋
長崎で被爆した韓国人元徴用工、李康寧さん(75)=釜山市在住=の訴訟で、十九日までに国と李さん側が、福岡高裁判決を不服としてそれぞれ上告の手続きをした。四度の司法判断で在外被爆者の救済の流れは出来上がったが、国は健康管理手当支給は地方自治体の事務とする見解を譲らず、裁判はまた続くことになった。実際の手当支給は三月に始まるが、法解釈にこだわる国の姿勢に、在外被爆者は新たな不信感を募らせている。(報道部・高比良由紀)
「手当支給は自治体」と譲らず 不信感募らす在外被爆者
「なぜ訴訟続ける」 困惑する長崎市
在外被爆者への手当支給について、判決は「支給窓口を定めた法令がないから、国に支払い義務がある。長崎市は支払い事務を委託されているだけで責任はない」とした。
国は、上告理由を「支払いは地方自治体の事務」「大阪府に支給を命じた昨年十二月の大阪高裁判決と相反する」の二点とした。李さん側は「支払いは国と市の連帯責任がある」とする訴えが棄却されたため、市を相手に上告手続きをした。
争点は、手当の支払い義務が国か、都道府県(広島、長崎両市含む)か―だが、行政上の手続き問題にすぎないとも言え、長崎市は「求められた手当は支払うのに、なぜ訴訟を続けるのか」と困惑する。
在外被爆者支援事業を提案した国の検討会委員だった土山秀夫・元長崎大学長は「手当は市を通しても国の財源。被爆者援護を国家補償ととらえず、これ以上の問題波及を避けたい旧態依然の官僚の姿」と見る。「国のメンツのために、多くの被爆者の命を犠牲にしかねない」と厳しい。
一方、三月から始まる在外被爆者全体を対象とした手当支給事務も、実際の事務を担う自治体を戸惑わせている。国と自治体の役割分担が、不透明なままだからだ。
市原爆被爆対策部の坂田寿孝部長は「世界各地で暮らす在外被爆者を一自治体が相手にするのは、事務範囲が広く、限界がある。生死や手当受給の確認作業が可能なのか。在外公館など国の機関でないと難しいのではないか」と話す。
二月に入り、手当の受給資格を長崎市に申請する韓国人被爆者が相次いでいる。まだ数百人が来崎を待つという。李さんの裁判を支援している平野伸人さんは来月一日、裁判継続に伴う韓国内の動揺を鎮めるため訪韓する。
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