NEWSあんぐる・在外被爆者訴訟
外国に住む被爆者に、被爆者援護法に基づく健康管理手当の受給資格を認めた大阪高裁判決が昨年末確定し、在外被爆者問題の解決へ道が開けたかに見えたが、長崎などの同種訴訟四件の原告は訴訟継続を決めた。争点は、国側が認めない国家賠償と手当支給期限の時効。原告らは二―三月、立て続けに予定される判決を、期待と不安を抱えて待つ。(報道部・高比良由紀)
争点は国家賠償と時効 “完全救済”へ闘い正念場
大阪高裁判決を受け、厚生労働省は、日本出国を理由に同手当を打ち切られた韓国人元徴用工、李康寧さん(75)に対し、裁判所を通じ、求められている手当支給を申し入れる方針。
しかし、李さんは二月七日に福岡高裁で言い渡される控訴審判決を待つ。国家賠償を求めた部分を、国側は「故意でも違法でもない」として、争う姿勢を崩していないからだ。李さんは「手当を払えば済む問題ではない。国は敗訴を認め、在外被爆者に謝罪することが最後のけじめ」と話す。
長崎市の元高校教諭、広瀬方人さん(72)の訴訟では、手当支給に加え、支給時期に絡む「時効」が問題。大阪高裁判決を受けた国の新たな方針では、過去五年にさかのぼって手当を支給するが、中国に滞在した一九九四年夏から一年間の手当返還を求める広瀬さんの場合、「既に時効が成立しているため、支給しない」(同省健康局)。
広瀬さんは「時効が発生する起点はいつなのか、未解決。国家賠償も私だけではなく、中国人強制連行など戦後処理の本質的問題にかかわってくる。これらの問題を突き崩す契機になれば逆に本望だ」と話す。
李さんと広瀬さんが訴訟を続けるのは、手当支給が在外被爆者すべての救済につながらず、海外での手帳取得ができないなど多くの課題を残しているからだ。
在外被爆者は世界三十四カ国、五千人を超す。その半数近い約二千百五十人が加入する韓国原爆被害者協会によると、手帳取得者は千人足らず。年老いた被爆者が来日するのは困難にもかかわらず、住んでいる土地での手帳取得や医療援助の道は依然、閉ざされている。
しかし同局は、海外での手帳取得、更新を可能とする法改正の考えもなく、来日を前提とした支援事業活用を呼び掛ける。
八日、長崎市を訪れた李さんは「来日できる人、できない人、手帳を持つ人、持たない人。問題は複雑、日韓両政府が方法を整理するべきだ」と変わらぬ窮状を訴えた。「私の判決で国の後ろ向きな姿勢をただす」。長年の闘いは正念場を迎えている。
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