NEWSあんぐる・在外被爆者訴訟の上告断念
国の支援策をめぐり揺れ続けた在外被爆者の援護問題。日本を出国した韓国人男性に、被爆者援護法に基づく健康管理手当の支給を認めた大阪高裁判決を受け、国が上告を断念し、形勢の大きな転機を迎えた。しかし、在外被爆者の県内支援者たちには不満も広がり、高齢化した被爆者を救うには援護の「内外平等」を即時に実現するしかないという焦りが表れている。(報道部・森永玲)
「内外平等」即時に 国家補償で隔たり
県内支援者の不満広がる
被爆者健康手帳を所持する対象者すべてに、健康管理手当が支給されるという成果は大きい。だが、被爆地長崎で活動する「李康寧さんと広瀬方人さんの裁判を支援する会」の平野伸人事務局長は「ちょこちょこ前進していく感じ」と感想を漏らした。
ちょうど一年前の昨年十二月十八日、坂口力厚生労働相は、渡日による被爆者手帳取得などの新支援策を発表したが、在外被爆者から「小出し、部分的」と酷評を浴びた。その一週間後、長崎地裁は、健康管理手当支給を求めた李さんに勝利判決を言い渡したが、国と市は控訴。すれ違いは続き、本年度始まった新支援策は、韓国側などから受け入れられず本格運用に至っていない。
厚労相の発表を受け記者会見した伊藤市長は、国とともに主張を認められなかった被告であり「在外被爆者の援護充実」を唱え続けてきた被爆都市の市長でもある。
立場は複雑だが「今後は『来日しないと手帳をもらえないのか』というのが課題になる。高齢化で来たくても来られないのが現実」と、裁判で対峙(たいじ)した原告と同じ問題意識を口にした。
そんな市長を「これだけ時間が過ぎた責任はどうなる。年に百人単位で亡くなっている」と平野事務局長は突き放す。
不満は、一連の裁判のうち健康管理手当以外に国家補償を求めた訴訟については今後も争う、とした国の姿勢にも向けられる。国家補償も求める広瀬さんは「私は李さんの役に立ちたいと裁判に踏み切った。ただ、国が戦争を始め、結果として被爆者が存在するという元来の信念は不変だ」と反発した。
被爆者と国の間で繰り返されてきた、被爆者援護は「国家補償」か「人道的救済」かの論争。「この問題になると、国は譲らない」(長崎被災協の山田拓民事務局長)という歴史的対立が、一刻を争う在外被爆者問題の解決にも影を落とそうとしている。
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