
| ウグメの話 (小値賀町) |

|
漁師を恨む海の妖怪? 静かな波間を満月に照らされて航行する船があった。見張りが叫ぶ「おーい、前方に瀬のあっぞー」。船頭が怒って答える「なんば寝ぼけとっとか、こっちにゃ瀬はかなったろーが」。見張りがなおも叫ぶ「そいばってんあそこに見えとるですたい」。見張りが悲痛な声で叫ぶ「船頭さーん、なんばしよっとね。早う船ば回さんば瀬に乗りあぐるばーい」。瀬に打ち寄せる白波を見た船頭「おっ!こりゃーいかん。船ば回すぞーみんなしっかり掴まっとけよー」。 何もない静かな海で何を血迷ったか、引き寄せられるように進路を転換し、勢いよく岩礁に向かう船。あっという間もなく座礁して沈没し、海の藻屑と消え去った。思わぬ所に瀬や島影が見え、それを避けようとした船が難破したりすることがあるという。 また、こんな事もあったそうな。 夜の港に威勢の良い掛け声が響く。大漁した船団が帰ってきたのだ。そう思って家々から浜に飛び出した浦人たちの目には、しかし船など一艘も見えず何時の間にか掛け声も聞こえなくなっていた。 「船頭さーん柄杓を貸してー」船べりから手がのびる。柄杓を貸すと化け物は懸命に海水を船の中に汲み入れる。やがて船は水船となって沈没。だからそんな時漁師は、底を抜いた柄杓を渡すのだそうな。 これは「ウグメ」という海の妖怪が起こす事で、「ウグメ」は海で死んだ人の亡霊だともいう。漁師に恨みを持ち、いろんな事を仕掛けるのだそうだ。「ウグメ」の悪戯に行き当たった人は、僧侶に頼んで「地蔵流し」という供養をしてもらった。 (塚原 博) |
|