初舞台に誓う完全燃焼
祭りのにぎやかさに誘われて、二頭の獅子が踊り馬場に姿を現す。浮かれ踊っては疲れて居眠り。チョウに起こされ再び踊り狂う。二頭の獅子それぞれの後半身を務めるのは、井手未来さん(16)と松田かん奈さん(24)。くんち初出演の二人は大役を果たすべく練習に励んできた。
古典調の本踊り「秋晴勢獅子諏訪祭日(あきはるるきおいのししのすわのまつりび)」を一九八六年から奉納している金屋町。今回、日本舞踊藤間流の藤間欽素峰(きんそほう)師匠の門下生六人が演じる。
井手さんは欽素峰師匠の孫。五歳から始めた日本舞踊歴は既に十年。だが、「飛んだり跳ねたりするのは…」と初めての獅子役に戸惑ったという。「自分にできることを精いっぱいやろう」と心に決め、練習を重ねてきた。「りりしくかっこよく決めたい」と磨き上げた演技で本番に臨む。
「シャギリの音が聞こえてきたらわくわくする」。もう一頭の獅子の後半身を担う松田さんは根っからのくんち好き。くんちの朝は毎年、テレビの前を離れないという。だが、あくまで画面の向こう側の世界でしかなかった。
「日本舞踊が好き」で高校入学後、欽素峰師匠の元に弟子入り。その一年後、初めて桟敷席でくんちを見た。目の前で繰り広げられる奉納踊り。「くんちに出たい」。あこがれの気持ちはますます高まった。
門をたたいて八年、欽素峰さんから出演の声がかかった。「感激。まさか自分が踊り馬場に立てる日が来るなんて」。くんちに向けた厳しい練習も、あこがれの気持ちを原動力に乗り切った。
「躍動感ある獅子を演じて、やり遂げたい」。初めての舞台に立つ二人は、完全燃焼を誓った。
2008年10月4日長崎新聞掲載
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