少年の日の情熱再び
「またこの舞台に立ちたい」−。一九九四年の長崎くんち後日の夜。すべてを終え町へ帰り着いた時、十二歳の少年の心に熱い思いが込み上げてきた。その少年は恵美須船の根曳(ねびき)の一人、船越隆治さん(26)。少年の時の情熱を胸に十四年ぶりに踊り馬場に立つ。
「ホーエイ、ホーライエイ」。賑町は海の神をまつる恵美須神社にちなみ、大漁万祝恵美須船を八六年から奉納。親船の恵美須船と子船の宝恵舟、豊来舟の船団が大漁を目指して突き進む。恵美須船は約四トンあり、曳物としては最重量級。根曳衆二十人がごりごりと車輪をきしませながら豪快に引き回す様は圧巻だ。
船越さんは賑町で生まれ育った。四歳で子役の花形、船頭役を、十二歳で中学生が引く宝恵舟の若根曳を、それぞれ務めた。
「踊り馬場を支配する空気、高揚する感情…。厳しい練習を乗り越え、そこに立った者にしか分からない」。たった今、奉納を終えてきたばかりのように、生き生きとくんちの魅力を語る。県外の大学に通っていたため七年前は出演を断念。「本当に残念だった。長崎に帰りたかった」。思いは募った。
熱い思いを抱いた少年の日から十四年。三年前に就職で帰郷した船越さんに、ようやく出番が回ってきた。今年一月、町内の根曳募集の呼び掛けに「出ます」と即答。早速ランニングや筋力トレーニングなど体力づくりを始めた。四トンの船を引き回すのは「とにかく重い」。ほぼ毎日続いた夏の練習は大変だったが、それでも苦にはならなかった。
「生まれ育った町の船に誇りを持っている。本番は雄大に、そして壮大に演技したい」。夢の舞台に向け船の出港準備は万全だ。
2008年10月3日長崎新聞掲載
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