力強く“土俵入り”復活
「ヨイショー、ヨイショー」。今月二十日、長崎市鍛冶屋町の八坂神社。力士のしこ踏みに合わせ、踊り馬場に詰め掛けた見物人は一斉に声を上げた。声援を受けるのは、西海市の久保田雅洋さん(36)。一七五センチ、一一五キロの堂々とした体格。十四年ぶりに奉納踊りを披露する西古川町で、力士役の大役を担う。
同町は江戸期、長崎での相撲興行を取り仕切っていたとされ、くんちでは、相撲の閉開幕を合図する櫓(やぐら)太鼓、弓取り式など、相撲ゆかりの踊りを毎回奉納。だが、七年前、同町を流れる中島川左岸を改修する県の事業に町を挙げ反対運動を展開し、くんち出場を断念。十四年ぶりの“晴れ舞台”に懸ける踊り町の熱意もひとしおだ。
「この人しかいない」−。弓取り式で力士役として白羽の矢が立ったのは、アマチュア相撲選手で、ここ十年間、地元の宮相撲で弓取りを披露する久保田さん。昨年十二月、知人の踊り町関係者から打診された。「よそ者が大役を務めていいのか」との不安もあり、悩んだが、踊り町の熱意に加え、「家族や地元の相撲仲間の応援の後押し」を受け出演を決めた。
手足の細かな動きの確認、弓取り式に出演する行司役の子どもの指導…。練習が本格化した七月以降はほぼ毎日、帰宅するのは午後十一時すぎ。だが、久保田さんは「出ると決めた以上、町の一員になったつもりで精いっぱいやり遂げたい」と決意を語る。
本番は、横綱白鵬関から貸与された化粧まわしを締める。「力強く堂々と演じたい」。十四年ぶりの復活に意気込む町の期待を背負い、踊り馬場に“土俵入り”する。
2008年9月26日長崎新聞掲載
|