長崎くんち開幕
  7踊り町に「モッテコーイ」

2008年10月8日長崎新聞掲載


 諏訪の森にシャギリの音が響き、時には勇壮、時には華麗な奉納踊りが観衆を魅了する−長崎くんちが七日、幕を開け、諏訪神社(長崎市上西山町)では午前中、七つの踊り町が奉納踊りを披露した。船や壇尻(だんじり)の豪快な引き回し、華やかな踊り子の舞、縦横無尽に駆け回る龍に詰め掛けた観客からは、「モッテコーイ」の掛け声が相次いだ。

詩舞 曳壇尻 新大工町

踊り子
扇子を手に華麗に舞う踊り子
優雅な舞にうっとり

 白い着物にはかま姿、長い髪を一本に結った女性十人が出演した詩舞(しぶ)。手にした扇子を滑らかに操り、「祝賀の詩(うた)」を舞うと、観衆は思わずうっとりした。踊り子が幕の中に姿を隠すと会場は「モッテコーイ」の大合唱。歓声に応えて詩吟「坂本龍馬を思う」を披露すると、節目節目の“決め”に、惜しみない拍手が送られた。

 優雅な舞の余韻が残る中、満を持して曳壇尻(ひきだんじり)が登場。「ヤッセ」の声に合わせ、会場からは手拍子がわき、根曳(ねびき)衆は音を立てながら三トンの壇尻を勇ましく引き回した。大技「五回転半」では、一周、二周と回転を重ねるたびに歓声は大きくなり、最後は割れんばかりの「モッテコーイ」の掛け声が響いた。

 最年少で詩舞に出演した三根理紗子さん(16)=県立長崎西高一年=は、「緊張したけど、踊りの出来は百点満点」と笑顔を見せた。



川船 榎津町

今村君
川船から勢いよく網を投げる今村君
船頭今村君見事に成功

 観衆の視線の先には、船首に立つ網打ち船頭の今村竜大君(8つ)=市立諏訪小三年=。大きな声援を浴びながら、緊張の第一投。放たれたえんじ色の網は、パッと広がった。パサッ。見事にすべての魚を捕らえた瞬間、会場からはわれんばかりの拍手と歓声。今村君は、ゆっくりと網をたぐり寄せ、捕った魚を高々と掲げた。

 二投目も危なげなく成功させた後は、「ヤッセ」の掛け声とともに船が動きだした。十六人の根曳(ねびき)衆によるスピード感あふれる船回し。長采(ながざい)の笛の合図で引き回される船は、まさに激流に翻弄(ほんろう)されながらも、川を突き進む船。長坂からは「モッテコーイ」が連呼され、会場は熱気に包まれた。

 大役を果たした今村君は「全部捕れてよかった。ほかの場所でもすべて捕りたい」と意気込んでいた。



龍踊り 諏訪町

龍踊り
愛らしい舞を披露した子どもたちの龍踊り
ファンもうなる多彩な演出

 龍方によって吹き込まれた命で目を見開き、髪を逆立て、たけり狂う青龍と白龍。不老長寿の源とされる月に見立てた宝珠を追って諏訪の森に天高く舞った。

 二番手で登場した諏訪町の龍踊り。一八八六(明治十九)年から続く伝統の出し物。子龍に加え、孫龍まで登場するのは諏訪町ならではだ。

 大ドラや長ラッパが鳴り響く中で、舞台狭しと玉を追う龍。とぐろを巻いて玉を探す「ずぐら」や眠り、十一人の龍方全員が踊りながら入れ替わる棒交代などを次々と披露。龍方が二度入れ替わる新技のダブル棒交代や、青龍と白龍が同時に踊る「双龍の舞」など表現の可能性を求めた多彩な演出も見せ、くんちファンをうならせた。

 子龍の玉使いを務めた大塚一真君(6つ)は「たくさん練習したからうまくできた」とにっこり笑った。



大漁万祝恵美須船 賑町

恵美須船
車輪をきしませながら豪快に回る恵美須船
豪快な船回しに大歓声

 勇ましい掛け声と囃子(はやし)を響かせながら、親船の恵美須船、子船の宝恵舟、豊来舟の3隻が大漁を目指し、踊り馬場に登場した。

 船頭は、漁業の神、恵美須役の田川冬馬君(6)。船首に立ち、重さ約1.5キロの生きたタイを見事に一本釣りすると観客席からは大歓声が上がった。

 船頭に負けじと、幼児ら網方35人が「えんやどっと、えんやどっと」と歌いながら、広げた網で魚の群れを引き寄せ、客席を大いに沸かせた。

 小中学生による宝恵舟、豊来舟も、前進、後進から豪快な船回しを披露。恵美須船は、曳(ひき)物としては最重量級の約4トン。20人の根曳衆による引き回しに観客は「モッテコーイ」を連呼した。

 「練習の成果を出し切った」。根曳の1人、河辺康昭さん(30)の顔には達成感がみなぎっていた。



櫓太鼓 本踊り 西古川町

バチ方
櫓太鼓を軽快にたたくバチ方
14年ぶり諏訪の森に響く

 相撲場で開場や閉場を知らせる「櫓(やぐら)太鼓」。長崎の名所や町の歴史を七五調の拍子で独唱する相撲甚句で奉納踊りはにぎやかに始まった。

 中本歩旺君(10)=市立諏訪小五年=が踊り馬場中央で片ひざ立てて直径約三十センチの太鼓をたたき始め、観客は息をのんだ。「パンパン…」。十四年ぶりに諏訪の森に響いた櫓太鼓の音。聞き入る観客。拍手と歓声が沸き起こった。

 続いて、横綱白鵬関の化粧まわしを着けた久保田雅洋さん(36)が弓取り式を披露。力強いしこ踏みに合わせ観客は一斉に「ヨイショー」と盛り上げた。

 本踊りでは、勇壮な調べに合わせ、六人の踊り手が歌舞伎舞踊を披露。町内の子ども八人が赤い浴衣姿で花を添えた。

 本番後、中本君は「緊張しなかった。夏休みの練習の成果を発揮できた」とたくましい笑顔を見せた。



本踊り 金屋町

本踊り
2頭の獅子が踊り馬場を駆け回った本踊り
獅子2頭が熱演 「ショモーヤレ」

 三味線の音に合わせ、扇子を持った六人の踊り手が舞い始めると、その姿にジッと見入る観客。六人のうち四人が、二頭の獅子に早変わりして、頭を上下左右に大きく揺さぶり踊り馬場を駆け回った。

 踊り疲れて獅子が眠ると、黄色の着物をまといチョウに扮(ふん)した二人の子どもが登場。チョウが肩を優しくたたいて獅子を起こすと、獅子は跳びはね、頭を揺らすなど息のあった踊りで観客を魅了。会場は「モッテコーイ」「ショモーヤレ」がこだました。

 所望踊りでは、町名の由来を紹介する「金屋町の唄」を披露。町内の子どもたちの、愛くるしい舞とかわいらしい歌声に合わせ、観衆は手拍子。会場は一体感に包まれた。

 獅子役の後半身を務めた井手未来さん(16)と松田かん奈さん(24)は「次も頑張りたい」と表情を引き締めた。



オランダ万才 新橋町

万歳役の染葉さん(右)と才蔵役の勝丸さん
軽快な動きで観衆を魅了した万歳役の染葉さん(右)と才蔵役の勝丸さん
一気に祭り気分に

 三味線が鳴り響き、四人の芸者が登場すると、ざわついていた会場は静まり返った。一番手で登場した新橋町のオランダ万才。水色の傘を手に優雅に舞う芸者たちが、観衆を一気に祭り気分に引き込んだ。

 続いて登場した主役の万歳と才蔵は、長崎検番の芸妓(げいこ)、染葉さんと勝丸さん。奇抜なメークと二人の青と黄色の衣装は異国情緒たっぷり。軽快な動きで息の合った掛け合いを披露、観衆の目をくぎ付けにした。

 二人が踊り馬場の中央で座り込んだ後、再び立ち上がって舞い始めると、会場からは大きな手拍子。ポーズを決めると「モッテコーイ」の声が飛んだ。

 「くんちは特別な舞台」と、気を引き締め練習に励んできた染葉さんと勝丸さん。出演後はともに、「無事に終えてほっとしている」と、笑顔を浮かべた。



県指定無形民俗文化財
角力踊道中囃子戦後初めて披露 西古川町


角力踊道中囃子
戦後初めて披露された角力踊道中囃子
 相撲ゆかりの櫓(やぐら)太鼓を奉納した西古川町は、県指定無形民俗文化財の「角力踊道中囃子(すもうおどりどうちゅうばやし)」を、戦後初めて披露した。

 同囃子は西古川町が明治、大正期にくんちで奉納した「相撲踊り」に合わせ大太鼓や締太鼓、笛で奏でる曲。町に継承者はいないが、伝統の囃子を復活させたいと、長崎市田中町の中尾地区シャギリ保存会に演奏を依頼した。

 同囃子は、傘鉾(かさぼこ)奉納後に披露。軽やかな笛と締太鼓が鳴り響く中、大太鼓方の三人が登場。力強く太鼓を打ち鳴らしながら、踊り馬場を時計回りにゆっくりと練り歩いた。笛を担当する城戸一さん(78)は「くんちという大舞台で披露できて感無量」と話した。















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