タイトルカット
<5>
職業訓練 再就職へ「毎日が勉強」

 池島炭鉱閉山後、多くの元炭鉱員が再就職に向けて職業訓練を受けている。浦田善人さん(44)もその一人。西彼長与町の県立長崎高等技術専門校の溶接科で、資格を取るため訓練に打ち込んでいる。

 長崎市京泊町の県営住宅で妻の孝子さん(40)と小学三年生の長男、雅人君(8つ)の家族三人で暮らす。閉山後、公営住宅に二度申し込んだが抽選に漏れ、三度目にやっと決まった。


職業訓練を受ける浦田さん。4月からは新しい職場での第一歩を踏み出す=西彼長与町高田郷、県立長崎高等技術専門校
 十月初旬、同市内の鉄工所に就職が内定した。その鉄工所はもともと中途採用はしていなかったが、特別な計らいで試験を受けさせてもらった。「採用が決まり、本当にほっとした。四十を超えているし景気も悪い。閉山したときは就職できるか心配だった。家族を抱えてフリーターをするわけにもいかない」と心境を語る。

 池島炭鉱では採炭現場で働き、チームリーダーのロング長も務めた。採炭は給与が高い職種の一つ。鉄工所は炭鉱に比べれば給与は大幅に落ちることになるが、「早いうちに就職すれば、そのうち賃金も上がるだろう。子どもも小さいので何とかやっていける」と話す。

 夏前に一度だけ池島を訪れた。閉山前と違い、子どもが遊ぶ姿が極端に減っていた。がらんとして寂しい風景だった。父親が炭鉱で働き始めた小学五年生のころから池島で暮らした。だが、池島に未練はないという。「専門校を出るまでは毎日が勉強。今はこれからのことで精いっぱい。振り返っている余裕はない」。来年四月、新しい職場での生活が始まる。

 同じ溶接科の山田政好さん(45)は事情が異なる。子どもは高校生が二人、中学生が一人。これから教育費が掛かる年ごろだ。再就職には慎重にならざるを得ない。

 職業訓練を受けている間は雇用保険が支給されるが、専門校を出れば炭鉱離職者求職手帳(黒手帳)による就職促進手当だけになる。「条件がいいところはなかなかない。求人によっては、黒手帳の手当より少ないところもある。給料が高くても福利厚生が整っていないところは不安だ。ゆっくりと考えて働くところを決めたい」と言う。

 長崎労働局によると、元炭鉱員の職業訓練入校者数は十月末までで四百七十六人。同専門校で職業訓練を受けているのは三十七人で、うち再就職が決まっているのは浦田さんだけだ。

(2002年月11月29日掲載)


←前頁 池島炭鉱TOP 次頁→