タイトルカット
<上>

雇用
 条件など厳しい情勢

 九州最後のヤマの灯を守ってきた池島炭鉱(西彼外海町)が十一月二十九日閉山、下請けを含め約千三百人が職を失った。会社側の提案からわずか一カ月半後の閉山。行政など関係機関が十分な対策を取る前に最後の日を迎えた。炭鉱マンたちの再就職先は、外海町に与える影響は、池島はどうなるのか―。山積する課題を追う。

求人枠あっても中身伴わず

 「十八人増えたと考えてもらっていい。さらなる雇用先を探して倍の数を目標としたい」。池島炭鉱閉山から一夜明けた十一月三十日。同炭鉱を経営してきた松島炭鉱(福岡市)の親会社、三井松島産業(同)の岩崎均管理部長は中間決算発表の席で、離職者対策に関する記者の質問にこう答えた。

 閉山提案についての労使交渉が妥結した同十五日、松島炭鉱の田代勉社長は七百十八人の求人枠確保を発表。「閉山までに千百人以上の雇用を確保したい」としていたが、半月の間に増やせたのはわずか十八人。元炭鉱マンたちの再就職の道が険しいことを示した。

 求人枠のうち百五人は、関連会社が国の炭鉱技術移転五カ年計画のために雇用する予定。このほかグループ会社で五十四人を雇用する。

就職相談をする元鉱員ら(左)。閉山による離職者たちの再就職への道は険しい=西彼外海町池島、臨時職業相談所
 五カ年計画で雇用されれば池島に残ることができる。だが、給与は現在の半分程度に減る見込みで、打診されても断るケースが多いという。元鉱員(37)は「五年後にまた仕事を探すことになる。それよりは職業訓練校に通って技術を身に付けたほうがいい」と話す。

 会社側が確保したとする求人枠に対しても元鉱員たちの反応は冷ややか。五カ年計画、グループ会社の分以外は職種や条件などは全く示されず、直轄鉱員だった男性(50)は「数だけ出しても白紙と同じ」と吐き捨てる。

 実際、炭鉱関係者の一人は「会社が確保したという求人のほとんどは求人誌から拾ったもの。条件は良くないだろう」と内情を明かす。池島を管轄する大瀬戸公共職業安定所の福原俊勝所長は「ローンを抱えた人も多く、数だけでなく中身が重要だ」と指摘する。

 十月の完全失業率は5・4%で過去最悪の数値を更新。県内の十月の有効求人倍率は〇・四〇倍と低い。一九九七年に閉山した三井三池炭鉱(福岡県大牟田市)の三池新労組の元組合長、馬場節さんは「炭鉱マンの再就職先での評判は良く、もっと欲しいという企業もあった。当時は今よりも雇用情勢が良く、地元企業の協力が得られた。今の長崎県では難しいだろう」と案ずる。

 厳しい雇用情勢を反映してか、会社側が閉山前に実施したアンケートでは約半数の従業員が職業訓練を希望した。だが、県立佐世保高等技術専門校の増永驍校長は「訓練をするだけでは意味がない。問題は終わった後、再就職できるかどうかだ」と説明する。

 池島に設置された大瀬戸公共職業安定所の臨時職業相談所には県内各安定所などの求人票が張り出されている。条件面には「経験者のみ」「未経験者は二十五歳まで」などの内容が目立つ。元炭鉱従業員の平均年齢は四十三歳。閉山の日、最後の仕事を終えた元鉱員の土橋孝明さん(47)はつぶやいた。「家のローンは十三年残っている。子どもの学費もあるし、金がかかる。これからどがんなるか分からんね」

(12月3日掲載)