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「おふくろの味」で支える 閉鎖が決まり「この先…」
午前五時。出稼ぎの下請け鉱員百六十人が暮らす寮の食堂に、朝げの煙と香りが立ち込める。献立はカレイの空揚げ、団子汁、おひたし。家族と離れて働く寮生にはうれしい「おふくろの味」だ。
早朝入坑の一番方が次々と席に着くと、調理場で働く四人の女性は大忙し。朝食後は弁当を作り、坑内作業に向かう寮生に「行ってらっしゃい」と声を掛け手渡す。その後も昼食、夕食の支度が続く。女性たちは「休む暇もないんだよ」と目まぐるしく動き回る。炭鉱はこんな人たちにも支えられている。
調理場の女性のリーダー格、西崎みどりさん(59)は八年目。最年長の宮崎繁子さん(64)はもう二十年目になる。ともに夫は元炭鉱マン。西崎さんは三十年、宮崎さんは五十年、池島に住む。
宮崎さんは「二十年前は寮生が三百人もいた。本当にてんてこ舞いで、思い出と言われてもねえ」と笑う。西崎さんは「八年前はまだ炭鉱に活気があった。食堂で殴り合う鉱員さんもいて怖かった」と懐かしそうだ。
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出稼ぎの下請け鉱員の食事を作る女性たち=西彼外海町池島、建親会寮
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寮生は「ごちそうさん」「味付けをもっと濃くして」などと女性たちに声を掛ける。炭鉱の仕事は重労働だけに、肉料理が人気。カレーなど「家庭の味」も喜ばれる。「やっぱり『うまかった』と言われるのが一番うれしい」と二人は顔を見合わせてほほ笑んだ。
だが、下請け寮の食堂は閉山に伴い十一月末の閉鎖が決まった。「閉山のうわさが出てからずっと心配だった」という二人とも職を失う。宮崎さんは佐世保市に住む子どもを頼るつもりだが、西崎さんは「夫も退職しているし、まだ働きたい」と望んでいる。
閉山で解雇された炭鉱従業員には、再就職までの支援措置として、有効期間が三年で失業給付などを受けられる「黒手帳」(炭鉱離職者求職手帳)と、同二年で同じような支援が受けられる「緑手帳」(特定不況業種離職者求職手帳)がある。「私たちにそんな支援はないでしょうね」と西崎さんの顔が曇った。
閉山まであとわずかに迫っても、調理場の忙しさは変わらない。女性たちは「私たちも、鉱員さんも、この先どうなるのだろう」と案じながら、寮生のために食事を作り続けている。
(11月2日掲載)
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