
|
<6・完>
|
難しい「次の仕事」探し
解雇後の再雇用先が明示されていない閉山提案。「次の仕事はそう簡単に見つからないだろうな」。直轄鉱員の田口博章さん(42)はつぶやいた。
十五年前、セールスマンから転職し、炭鉱の坑道を掘る掘進作業員になった。給料はそれまでの二倍の手取り四十万円に跳ね上がった。「いつ落盤があるか分からない中で命を張って仕事をしてきた」と胸を張る。
炭鉱が生活基盤を肩代わりする池島の生活環境は特殊だ。社宅の家賃は千五百―三千五百円で、水道は無料。家賃と光熱費を合わせても一万円あれば足りる。「長崎で3DKを借りれば十万円はいるだろう。とても無理だ」
田口さんには妻と中学三年を筆頭に三人の子どもがいる。「受験も控えているし、今後のことをよく話し合わないと」。言葉は沈んでいた。
「直轄はまだいい。おれたちは退職金もろくにない」。炭鉱に勤めて十七年になる下請け会社の機械鉱員(38)は、とつとつと話す。

| |
閉山提案で多くの炭鉱マンと家族の不安が募る池島炭鉱=西彼外海町池島
|
七年前、坑道の掘進作業中に岩が落ちてきて左ひざを骨折した。傷は今も痛む。三年前の給料は手取り五十万円だったが、二年前の給与25%カットと昨年の坑内火災で仕事が減り、半減した。
三年前の給料を水準に組んだ車などのローンはまだ残っている。中学三年の息子は「高校には行かない」と親を気遣う。鉱員は「直轄よりきつい仕事をしてきた。炭鉱で働いたあかしがほしい」と言って、左足をさすった。
池島炭鉱で働く従業員の平均年齢は四十三歳。閉山すれば直轄、下請け合わせて約千二百人が離職する。だが炭鉱を経営する松島炭鉱の親会社、三井松島産業が現在確保している再就職先は約五十人分にすぎない。
池島を抱える外海町がある西彼杵半島の雇用情勢は最悪だ。大瀬戸公共職業安定所によると、公共工事の落ち込みなどで、八月の有効求人倍率は前年を0・08ポイント下回る0・27。百人が求職して二十七人しか職が見つからなかった計算だ。
「炭鉱と同レベルの給与の仕事を見つけるのは難しい」と頭を悩ます同職安。長崎労働局の沢田育朗・職業安定部長は「県内十一の安定所を中心に職を確保し、九州、東海、関東など労働局の協力を得て求人確保に努める」と対応に懸命だ。
炭鉱の従業員には、離職後三年間にわたり失業給付などを受けられる炭鉱離職者求職手帳(黒手帳)などの支援措置がある。だが、「三年の間に景気がよくなり、仕事が見つかるのだろうか」と、考え込む田口さんの将来への不安は尽きない。
「私たちはどうすればいいの」。ベビーカーの中で笑う一歳半の娘を見詰めながら、若い母親が力なく言った。強い木枯らしが吹き付ける池島の冬が、もうじきやって来る。
(大瀬戸支局・松尾潤、福岡支社・坂本忠司、報道部・三浦祐二、永瀬徳豊、村田傑人が担当しました)
(10月20日掲載)
|
|

|
|